「Why I designed Otovent」オトヴェントの開発者であるDr.Sven-Eric Stangerupのプレゼンテーション(文字起こし)

「Why I designed Otovent」オトヴェントの開発者であるDr.Sven-Eric Stangerupのプレゼンテーション(文字起こし)

本記事は、第21回日本小児耳鼻咽喉科学会において、名優が共催した「ランチョンセミナー2」で上映されたオトヴェントの開発者であるDr.Sven-Eric Stangerupのプレゼンテーションを文字起こししたものです。

バルサルバ法を上手くできない小児の中耳陰圧をどう解消するか

私は、Dr.スタンガップ、コペンハーゲン出身です。オトヴェントの父(開発者)です。今日は、私がどのようにオトヴェントを開発したかをお話しますが、まずはその背景をお話します。いくつかスライドをお見せします。

私は、コペンハーゲンにあるゲントフテ大学病院の准教授でした。世界の他の場所と同じように、多くの疫学研究を行い、滲出性中耳炎(Otitis Media with Effusion, 以下「OME」)が非常に頻発する症状であることを発見しました。

それは大きな問題でした。私たちはどうすればいいでしょうか?

大人であれば、耳管機能不全の場合、バルサルバ法を行って中耳の陰圧を解消することができます。しかし、多くの小児はこれを効果的に行うことができません。どうすればいいでしょうか?

Valsalva's maneuver

 

優れた治療法である換気チューブも問題がないわけではない

Ventilation tubes

1954年以降、さまざまな換気チューブが開発されてきたように、(換気チューブは)中耳の陰圧をすぐに解消し、聴力をただちに回復させる優れた治療法です。しかし、これには問題がないわけではありません。

まず、換気チューブを挿入するために、子どもに全身麻酔を施します。所要時間は1分程です。その後、多くの場合(約20%)、経過観察期間中に分泌液が見られます。

通常、換気チューブは6~10ヶ月間留置されます。そして、それは受動的に外耳道に押し出されます。押し出された症例の約5~10%では、後年手術が必要となる永久穿孔が残ります。これらは、換気チューブの種類によって異なります。

Problems with ventilation tubes

 

就学前の子どもの約80%がOMEを経験

Cummulative incidence of SOM/OME

就学前の子供の約80%が、少なくとも1回はOMEを経験することが分かっています。これらの約半数は、3ヶ月未満の短期間です。しかし、半数の症例では、OMEまたは機能不全は3ヶ月以上の長期にわたります。そして、これは約40dBの聴覚障害を引き起こします。

研究から分かったことは、季節による変動が非常に大きいということです。

Epidemiology (summary) 3

 

3ヶ月の経過観察期間に何をするべきか

ある診断時にOMEと診断された子ども達は、3ヶ月後には滲出液は自然に消失していました。場合によっては、まだ滲出液が残っていました。

そのため、3ヶ月間経過観察するという治療戦略をとることになりました。3ヶ月後も滲出液が残っている場合は、換気チューブを挿入することができます。

では、聴力が低下しているものの、自然に治癒する可能性もあるこの3ヶ月の経過観察期間に、何をすればよいのでしょうか?

研究から、基本的にすべての鼓膜病変は、小児期に長期間のOMEを患った患者に見られることもわかっています。そして、中耳圧が常に正常だった子供は、鼓膜の病気を引き起こさないこともわかっています。

Eardrum pathology (summary) 2

 

1988年にオトヴェントのプロトタイプを開発

そこで、経過観察中の治療の選択肢を用意するために、そして非常に普及した換気チューブでの行き過ぎた治療をしないために、オトヴェントを開発することにしました。デンマークでは、年間約6万本の換気チューブが挿入されています。一部の子供には、最大11回も挿入されています。

1988年、私は自宅の工房で、オトヴェントのプロトタイプを作りました。

When I designed Otovent

 

中耳腔陰圧・慢性OMEの子どもを対象に臨床試験を実施

そして私たちは、耳鼻咽喉科クリニックで研究を行いました。100人の長期にわたる中耳腔陰圧(-200~-400, C2型)または慢性OMEの子供を、2週間経過観察する、2週間自己耳管通気を行うグループにわけました。

Inclusions-criteriae

 

このグループ(経過観察)では、中耳圧が著しく低下していました。多くの場合、これはOMEの前段階です。左列をみると、14%の子どもは正常圧に回復し、62%の子どもは依然として陰圧でした¹⁾。そして、24%の子どもは、この2週間の観察期間にOMEを発症しました¹⁾。

自己耳管通気のグループを見てみると、滲出液が生じたのは、わずか5%であったことがわかります¹⁾。

Change in middle ear pressure after 2weeks, in ears with negative pressure

 

少なくとも3ヶ月間OMEを患っていた換気チューブの適応となるグループをみると、2週間の継続的な観察後、15%は治療なしで滲出液が消失しました¹⁾。つまり、これらは過剰治療になっていたことになります。

自己耳管通気のグループでは、半数の子どもが滲出液が消失し、換気チューブは必要ありませんでした¹⁾。

Change in middle ear pressure after 2weeks, in ears with SOM/OME

 

自己耳管通気によって換気チューブの必要性を約50%減らせる可能性がある

私たちの結論は、早期に耳管機能不全によるティンパノメトリーC2型曲線の時点で自己耳管通気を始めれば、OMEを約80%減らせる可能性があるということです¹⁾。

そして、自己耳管通気によってOMEにおける換気チューブの必要性を約50%減らせる可能性があります¹⁾。もちろん、子どもたちは風船を膨らませることができる年齢でなければなりません。親にもよりますが、3~4才くらいです。

Conclusion2

 

1991年にアビゴ社がオトヴェントを上市

1988年には、オトヴェントのデザインはできていましたが、それを商品化するのは、なかなか難しかったんです。1991年、アビゴというスウェーデンの会社がオトヴェントを上市しました。

I designed Otovent in 1988, it came into the market in 1991 by Swedish company

 

航空性中耳炎に関する研究も実施

長年の臨床経験と旅行中の個人的な経験から、飛行機の降下中に耳の痛みを訴えて泣く人をよく見かけます。そこで、飛行中の航空性中耳炎の割合を調査してみることにしました。

コペンハーゲン空港に3人の医師、ロンドン・ヒースロー空港に3人の医師を配置した研究を立ち上げました。毎日、コペンハーゲンからロンドンへのフライトが4便、ロンドンからコペンハーゲンへのフライトが4便あります。

空港では、ティンパノメトリー、耳鏡、アンケートを用意し、離陸前に搭乗ゲートで乗客を検査しました。半分のフライトでは、彼らはランダムに「オトヴェント・フライト」に割り当てられ、飛行中に何らかの問題を感じた場合は、指示に従って自己耳管通気を実施しました。

まずは、少し生理学について説明します。左側に中耳を描きました。離陸前は、飛行機内、飛行機外、中耳内の気圧は1気圧です。

Middleear pressure before take off

 

飛行機が上昇すると、周囲の気圧は低下します。与圧キャビンがあるため問題はありませんが、飛行機内の気圧は、約3/4気圧まで低下します。そのため、中耳には相対的に高圧が生じますが、耳管は一方弁のように機能するため、この高圧は容易に解消されます。

Middleear pressure during ascent

 

巡航中は、中耳内だけでなく飛行機内も、3/4気圧で安定します。飛行機外は、1/10気圧です。

Middleear pressure at cruise level

 

そして数時間後、降下中は気圧が上昇します。そのため、中耳内には相対的に陰圧が生じます。一方弁のため、バルサルバ法を行っても、この圧力差を解消するのは難しい場合があります。

Middleear pressure during descent

 

そのため着陸後には、大人・子どもの中耳に滲出液や血液が溜まる航空性中耳炎と呼ばれる状態になることがあります。私たちは、これがどの程度一般的なのかを調べてみようと思いました。

Middleear pressure after landing (barotitis)

 

耳抜きできなかった乗客の約70%がオトヴェントで耳抜きできるように

乗客が飛行機を降りた後、再検査を受けてもらい、中耳の圧力を測定しました。陰圧の場合は、バルサルバ法を行って陰圧を解消するように指示しました。わずかな陰圧であれば、通常はバルサルバ法で解消できます。

陰圧があった86%の乗客のうち、約半数がバルサルバ法で陰圧を解消できました²⁾。

バルサルバ法で陰圧を解消できなかった乗客には、オトヴェントを膨らませるように指示しました。耳抜きできなかった乗客の約70%が、オトヴェントで耳抜きをすることができました²⁾。

Middleear pressure after landing & after Valsalva & after Otovent3

 

航空性中耳炎に関するまとめ

結論として、アンケート調査から、過去の耳痛と実際の耳痛の間に高い相関関係があることがわかりました。過去の飛行中に耳痛を経験した人の半数が、今回の飛行中にも耳痛を経験しました²⁾。

10%に中耳浸出液の耳鏡所見が認められましたが、これはすべて大人でした²⁾。

18%の乗客は、飛行後に陰圧となりました。46%はバルサルバ法を実施した後に陰圧が正常化し、85%はバルサルバ法とオトヴェントで陰圧が正常化しました²⁾。

Summary&Conclusion

 

ご清聴ありがとうございました。

 

References

¹⁾Stangerup SE, Sederberg-Olsen J, et al. Autoinflation as a treatment of secretory otitis media. A randomized controlled study. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1992; 118(2):149-52.
²⁾Stangerup SE, Mads Klokker, et al. Point Prevalence of Barotitis and Its Prevention and Treatment with Nasal Balloon Inflation: A Prospective, Controlled Study. Otology & Neurotology, Inc. 2004; 25:89-94

 

▼実際のプレゼンテーション動画もぜひご覧ください

 

▼製品情報
販売名:オトヴェント
区分:一般医療機器
届出番号:12B1X00003ABIGOM
製造販売業者:株式会社名優

取材日
取材場所
第21回日本小耳鼻咽喉科学会総会・学術講演会 第2会場(ソニックシティーホール大宮)
※ご所属・肩書・役職等は全て掲載当時のものです。