鼻洗浄とは?鼻うがいとの違い
鼻洗浄とは、鼻の中に洗浄液を流し、鼻水やほこり、花粉などを物理的に洗い流す方法です。一般に「鼻うがい」とも呼ばれており、両者に明確な違いはありません。
鼻洗浄には、ボトルやポット、シリンジ状の専用器具が使われます。鼻の入り口に少量の液体を噴霧する鼻スプレーとは異なり、ある程度の量の洗浄液を鼻腔内へ流すのが特徴です。
家庭で行う鼻洗浄は、鼻の中を清潔に保ち、症状を和らげるためのセルフケアです。病院や耳鼻咽喉科で行われる鼻処置や、副鼻腔に対する専門的な洗浄とは異なります。
鼻洗浄に期待できる4つの効果
鼻洗浄には、次のような効果が期待できます。
鼻水や粘液を排出しやすくする
鼻づまりがあるときは、粘り気の強い鼻水が鼻の中にたまっていることがあります。
生理食塩水で鼻の中を洗うと粘液が薄まり、鼻水を排出しやすくなる可能性があります。鼻をかむだけでは取り除きにくい鼻水があるときにも、症状の緩和が期待できます。
花粉やほこりなどの異物を洗い流す
花粉やハウスダスト、ほこりなどが鼻の粘膜に付着すると、くしゃみや鼻水、鼻づまりが起こることがあります。
鼻洗浄は、こうした異物を物理的に洗い流す方法です。ただし、アレルギー性鼻炎そのものを治す治療ではありません。症状が続く場合には、点鼻薬や内服薬などによる治療が必要になることもあります。
鼻の乾燥や不快感を和らげる
空気が乾燥している環境では、鼻の粘膜も乾きやすくなります。適切な洗浄液を使うことで鼻腔内がうるおい、乾燥による不快感が和らぐ可能性があります。
一方、頻繁に洗いすぎると、かえって刺激や乾燥を感じる人もいます。回数を増やしすぎないことが大切です。
副鼻腔炎による症状の緩和を助ける
鼻洗浄は、副鼻腔炎による粘り気のある鼻水や鼻づまりを和らげる補助療法として使われています。
2025年に更新された米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会の成人副鼻腔炎診療ガイドラインでも、慢性副鼻腔炎の症状を和らげる方法として、生理食塩水による鼻洗浄や鼻噴霧用ステロイド薬が推奨されています。
鼻洗浄は副鼻腔炎の症状緩和に役立つ
鼻洗浄を行うと、鼻の中にたまった粘液や炎症性の分泌物が排出されやすくなります。そのため、副鼻腔炎による鼻水や鼻づまり、後鼻漏などの症状を和らげる方法の一つとして用いられています。
ただし、家庭で行う鼻洗浄によって、副鼻腔の奥を直接すべて洗えるわけではありません。細菌感染や鼻ポリープなど、副鼻腔炎の原因そのものを鼻洗浄だけで治療することも困難です。
副鼻腔炎では、症状や原因に応じて次のような治療が行われます。
- 鼻噴霧用ステロイド薬
- 抗菌薬
- 抗アレルギー薬
- 耳鼻咽喉科での鼻処置
- ネブライザー治療
- 内視鏡による手術
鼻づまりや黄色・緑色の鼻水が長引く場合や、顔面の痛み、圧迫感、嗅覚低下などがある場合は、鼻洗浄だけで対処せず、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
鼻洗浄器を使った正しいやり方
鼻洗浄器には、ボトルを押して洗浄液を送り込むタイプや、重力を利用して流すタイプなどがあります。製品によって使い方が異なるため、最初に取扱説明書を確認してください。
一般的な手順は次のとおりです。
①手を洗い、鼻洗浄器を確認する
鼻洗浄を始める前に、石けんで手を洗います。鼻洗浄器に汚れや水分が残っていないことも確認してください。汚れた器具を使うと、洗浄液が微生物に汚染される可能性があります。
②生理食塩水などの洗浄液を準備する
市販の鼻洗浄液や、鼻洗浄器に付属する洗浄剤を説明書に従って準備します。洗浄剤を水に溶かす場合は、蒸留水、滅菌水、または一度煮沸してから冷ました水を使用します。水道水をそのまま使うのは避けてください。洗浄液は、熱すぎても冷たすぎても刺激になります。人肌程度を目安とし、使用前に温度を確認しましょう。
③洗面台の前で前かがみになる
洗面台の前で少し前かがみになり、顔をわずかに傾けます。上を向くと洗浄液がのどに流れ込みやすくなるため、基本的には前を向くか、やや下を向いた状態で行います。ただし、適切な姿勢は器具によって異なるため、製品の説明書に従ってください。
④口で呼吸しながら洗浄液を流す
口を開けてゆっくり呼吸しながら、鼻洗浄器の先端を片方の鼻の穴に軽く当てます。洗浄液を強く吸い込まず、器具をゆっくり操作してください。正しい姿勢で行うと、洗浄液は反対側の鼻、または口から流れ出ます。
⑤反対側も同じように洗う
片側の洗浄が終わったら、反対側も同じように洗います。洗浄液の量や左右を洗う回数は製品によって異なります。説明書に記載された使用量を守りましょう。
⑥鼻に残った洗浄液を出す
洗浄後は頭を軽く傾け、鼻の中に残った洗浄液を自然に排出します。強く鼻をかむと、鼻の奥と中耳をつなぐ耳管に圧力がかかることがあります。鼻をかむ場合は、片側ずつやさしく行ってください。
⑦鼻洗浄器を洗って乾燥させる
使用後は、取扱説明書に従って鼻洗浄器を洗います。洗浄後は十分に乾燥させ、清潔な場所で保管しましょう。水分が残ったまま保管すると、器具の中で微生物が増える可能性があります。FDA(米国食品医薬品局)も、使用前に器具が清潔で完全に乾いていることを確認し、使用後に洗浄・乾燥させるよう案内しています。
鼻洗浄器の使い方の解説動画
名優の鼻洗浄器「EMSハナ通り®」の使い方を解説した動画です。よろしければ、ご覧ください。
鼻洗浄に生理食塩水を使う理由
鼻洗浄では、真水ではなく、体液に近い濃度へ調整された生理食塩水などを使用します。
真水と体液では塩分濃度が異なります。そのため、真水を鼻に入れると、浸透圧の差によってツーンとした痛みや刺激を感じやすくなります。塩分濃度を適切に調整した洗浄液であれば、鼻粘膜への刺激を抑えながら洗浄できます。
家庭で使用する場合は、次のような洗浄液を選ぶとよいでしょう。
- 鼻洗浄器専用の洗浄液
- 専用洗浄剤を安全な水に溶かしたもの
- 鼻洗浄への使用が認められている生理食塩水
開封してから長期間たった生理食塩水や、本来の用途が異なる製品を自己判断で使用するのは避けてください。
生理食塩水を自宅で作る場合の注意点
水と食塩から洗浄液を作る方法もありますが、濃度や衛生管理を誤る可能性があります。
特に、次のような使い方は避けましょう。
- 食塩を目分量で入れる
- 水道水をそのまま使う
- 作った洗浄液を翌日以降も使う
- 一度使用した液を容器へ戻す
- 汚れた容器で調製・保存する
初めて鼻洗浄を行う場合は、濃度を調整しやすい専用洗浄剤や、調製済みの洗浄液を使うと安心です。
鼻洗浄に水道水をそのまま使わない
飲用できる水道水でも、鼻洗浄にそのまま使うのは避けたほうが安全です。
飲み水として問題にならない微生物でも、鼻から入ると重篤な感染症を起こす可能性があります。発生頻度は極めて低いものの、海外では、適切に処理されていない水を鼻洗浄に使ったことに関連する感染事例が報告されています。
CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、鼻洗浄に次のいずれかの水を使うよう案内しています。
- 「蒸留水」と表示されている水
- 「滅菌水」と表示されている水
- 水道水を煮沸し、その後冷ました水
CDCの案内では、水道水を沸騰させた状態で1分間煮沸し、使用できる温度まで冷ます方法が示されています。
一般的なペットボトル入り飲料水や、浄水器を通しただけの水も、必ずしも鼻洗浄に適しているとは限りません。水の種類だけで判断せず、鼻洗浄器や洗浄剤の説明書を確認してください。
鼻洗浄は1日何回行う?
鼻洗浄を行う回数に、すべての人へ共通する基準はありません。症状や使用する器具、洗浄液の量、治療目的などによって、適切な回数が異なるためです。
市販の鼻洗浄器を使う場合は、説明書に記載された回数を守りましょう。医師から鼻洗浄を指示されている場合は、医師の指示を優先してください。
一般的なセルフケアでは、1日1~2回程度を目安として案内されることがあります。ただし、これはすべての製品や症状に共通する基準ではありません。
回数を増やせば効果が高まるとは限らず、洗いすぎると次のような症状が現れることがあります。
- 鼻の乾燥
- ヒリヒリする刺激
- 鼻血
- 耳の違和感
- 鼻粘膜の不快感
違和感が出た場合は使用を中止し、症状が続くときは耳鼻咽喉科へ相談しましょう。
鼻洗浄を安全に行うための6つの注意点
強い圧力で洗浄液を入れない
鼻洗浄器を強く押すと、洗浄液が耳管の方向へ入り、耳の痛みや詰まった感じにつながる可能性があります。液が通りにくい場合も、無理に圧力をかけてはいけません。
洗浄液を強く吸い込まない
洗浄液を鼻から勢いよく吸い込むと、のどに流れたり、むせたりすることがあります。鼻で吸い込むのではなく、器具から流れる液を自然に通すようにします。
洗浄後に強く鼻をかまない
鼻の中に残った洗浄液を出そうとして強く鼻をかむと、耳に圧力がかかります。片方ずつ、やさしくかみましょう。
鼻洗浄器を家族と共用しない
鼻洗浄器を共用すると、鼻水や分泌物を介して微生物が移る可能性があります。鼻洗浄器は一人につき一つ用意してください。
洗浄液を作り置きしない
自宅で調製した洗浄液を放置すると、微生物が増える可能性があります。必要な量だけをその都度用意し、残った液は廃棄しましょう。
鼻洗浄器を毎回洗って乾燥させる
使用後は器具を洗い、十分に乾燥させます。洗浄方法、使用できる水、器具の交換時期は製品によって異なるため、説明書を確認してください。
鼻洗浄を控えたほうがよいケース
次に該当する場合は、自己判断で鼻洗浄を行わず、事前に耳鼻咽喉科へ相談してください。
- 鼻が完全につまっていて洗浄液が通らない
- 鼻血が出ている、または繰り返している
- 強い耳痛や耳の詰まった感じがある
- 中耳炎を起こしている
- 鼻や副鼻腔の手術を受けた直後である
- 鼻の中に傷がある
- 免疫機能が低下している
- 器具を自分で正しく扱うことが難しい
- 小さな子どもに使用する
FDAも、免疫機能に問題がある人は、鼻洗浄を始める前に医療従事者へ相談するよう案内しています。
鼻洗浄中や洗浄後に、鼻や耳の強い痛み、鼻血、強い頭痛、発熱などが現れた場合は、使用を中止してください。
鼻洗浄だけで改善しない場合は耳鼻咽喉科へ
鼻洗浄を続けても症状が改善しない場合は、病院や耳鼻咽喉科を受診しましょう。耳鼻咽喉科では、鼻鏡や内視鏡で鼻の中を観察し、必要に応じて画像検査やアレルギー検査などを行います。
原因や症状に応じて、次のような治療が選択されます。
- 鼻水や分泌物を吸引する鼻処置
- ネブライザー治療
- 鼻噴霧用ステロイド薬
- 抗アレルギー薬
- 抗菌薬
- 副鼻腔炎に対する手術
家庭用の鼻洗浄器と、耳鼻咽喉科で受ける処置は同じものではありません。症状が長引く場合は、鼻洗浄だけで済ませず、原因を調べてもらうことが大切です。
まとめ
鼻洗浄は、生理食塩水などを使って、鼻水や花粉、ほこりなどを洗い流すセルフケアです。副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などによる症状の緩和にも利用されています。
安全に行うためのポイントは次のとおりです。
- 生理食塩水など、鼻洗浄用の洗浄液を使う
- 水道水をそのまま鼻に入れない
- 蒸留水、滅菌水または煮沸して冷ました水を使う
- 強い圧力で洗浄液を入れない
- 洗浄後に強く鼻をかまない
- 使用後の器具を洗い、十分に乾燥させる
- 使用回数は製品の説明書や医師の指示に従う
鼻洗浄は、すべての鼻の病気を治す方法ではありません。症状が長引く場合や、発熱、強い顔面痛、耳の痛み、繰り返す鼻血などがある場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。
参考資料
- 厚生労働省eJIM「インフルエンザと風邪」
- CDC「How to Safely Rinse Sinuses」
- FDA「Is Rinsing Your Sinuses With Neti Pots Safe?」
- 米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会「Clinical Practice Guideline」
- Clinical Practice Guideline: Nasal Irrigation for Chronic Rhinosinusitis
関連製品|EMSハナ通り

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療に代わるものではありません。鼻の症状にお心当たりがある場合は、自己判断せず耳鼻咽喉科を受診してください。
