滲出性中耳炎とは?症状・原因や治療、プールの注意点などを解説します。【子ども・大人別】

滲出性中耳炎とは?症状・原因や治療、プールの注意点などを解説します。【子ども・大人別】

滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)は、鼓膜の奥にある中耳に滲出液と呼ばれる液体がたまる病気です。鼓膜や耳小骨の振動が伝わりにくくなるため、聞こえにくさにつながることがあります。

特に子どもは、自分から「聞こえにくい」と訴えないこともあります。本人の訴えだけでなく、家庭や園・学校での反応にも目を向けることが大切です。

本記事では、滲出性中耳炎の症状や原因、治療、日常生活で気を付けることなどを解説します。

公開日:2026年9月15日

滲出性中耳炎とは

読み方と耳の中で起きていること

「滲出性中耳炎」は「しんしゅつせいちゅうじえん」と読みます。

鼓膜の内側にある中耳に滲出液と呼ばれる液体がたまっている状態で、耳と鼻の奥をつなぐ耳管の働きなどが関係します。

中耳の換気がうまくいかなくなると液体が残り、鼓膜や耳小骨の振動が伝わりにくくなるため、聞こえにくさにつながることがあります。

特に子どもは、自分から「聞こえにくい」と訴えないこともあります。本人の訴えだけでなく、家庭や園・学校での反応にも目を向けることが大切です。

 

急性中耳炎との違い

滲出性中耳炎と急性中耳炎は、同じ「中耳炎」でも状態が異なります。

急性中耳炎では、中耳に細菌やウイルスが感染して耳の痛みや発熱などがみられることがあります。一方、滲出性中耳炎ではこうした症状が目立たず、中耳に残った液体や聞こえにくさが問題になることがあります。

急性中耳炎のあとに中耳の液体が残り、滲出性中耳炎の状態が続く場合もあります。

 

滲出性中耳炎の症状

子どもにみられる症状と変化

子どもの滲出性中耳炎では、強い痛みよりも聞こえにくさが問題になることがあります。とくに、自分の症状をうまく説明できない年齢では、家庭や園・学校での様子が気づくきっかけになります。

 

子どもの行動や言語・学習への影響から気づくことがある

聞こえにくい状態が続くと、呼びかけへの反応が弱い、聞き返しが増える、テレビの音を以前より大きくするといった変化がみられることがあります。

聞こえの状態は、言葉の発達や学習、行動、生活の質を考えるうえでも確認が必要です。

「最近、聞き返しが増えた」「呼んでも反応しにくい」と感じる場合は、家庭だけで原因を決めつけず、耳鼻咽喉科で鼓膜や聴力の状態を確認してもらいましょう。

 

大人にみられる症状

大人の滲出性中耳炎でも、聞こえにくさや耳がつまったような感覚がみられることがあります。

成人では子どもと原因や診療上の注意点が異なる場合があるため、「子どもによくある病気だから」と同じ前提で考えないことが大切です。

 

耳のつまった感じや聞こえにくさが中心となることがある

大人では、耳がふさがったように感じる、音が聞こえにくいといった症状をきっかけに受診することがあります。

ただし、こうした症状だけで滲出性中耳炎と判断することはできません。症状が続くときは自己判断で様子を見続けず、耳鼻咽喉科で鼓膜や中耳の状態を確認してもらうことが重要です。

 

滲出性中耳炎が起こる原因

子どもに多い理由

子どもに滲出性中耳炎が多い背景には、耳と鼻の奥をつなぐ耳管の発達が関係しています。

子どもの耳管は大人より短く、水平に近いうえ、機能も発達の途中です。そのため、中耳の換気や液体の排出がうまくいかなくなると、滲出液がたまりやすくなります。

 

鼻・副鼻腔やアデノイドとの関係

鼻や副鼻腔、鼻の奥にあるアデノイド(咽頭扁桃)などの状態は、耳管の働きに影響することがあります。そのため、診療では耳だけでなく、鼻の症状や上気道の状態も確認される場合があります。

 

大人の滲出性中耳炎には複数の背景がある

大人の滲出性中耳炎には複数の背景があり、耳管の働きに影響するさまざまな状態を考慮する必要があります。

とくに片側だけに症状がある片側性(へんそくせい)や中耳の貯留液が長引いている遷延例(せんえんれい)の場合には、耳だけでなく、耳管周辺を含めた背景原因を確認することが重要です。

小児で用いられる経過観察の考え方を成人にそのまま当てはめず、症状が続く場合には耳鼻咽喉科で必要な評価を受けましょう。

子ども 大人
背景 耳管の発達や鼻・副鼻腔、アデノイドなど 複数の背景原因があり小児と同じではない
症状への気づき 聞き返しや反応、テレビの音量など行動の変化 耳のつまった感じや聞こえにくさなどの自覚
診療 鼓膜、聴力、発達・生活への影響をみながら経過を追う とくに片側性・遷延例では背景原因も含めて評価する

 

 

滲出性中耳炎の診断と経過の確認

耳鼻科で行う診察と検査

滲出性中耳炎では、鼓膜を観察するだけでなく、中耳の状態や聞こえへの影響を必要に応じて確認します。

 

鼓膜所見・ティンパノメトリー・聴力検査で状態を確認する

診察では鼓膜を観察し、中耳に液体がたまっているかどうかを確認します。

ティンパノメトリーは、鼓膜や中耳の動きを評価する検査です。また、聞こえへの影響を調べるため、聴力検査が行われることもあります。子どもの場合は、年齢や発達段階に応じて検査方法を選びます。

こうした検査結果は、滲出液の有無を確認するだけでなく、経過観察を続けるか、次の治療を考えるかを判断する材料になります。

 

経過観察から次の対応を考える目安

滲出性中耳炎は経過とともに改善することもあるため、状態によってはすぐに手術を行わず、経過を見る方針が選ばれます。

ただし、経過観察は「何もしない」という意味ではありません。鼓膜や聴力の状態を確認しながら、必要に応じて方針を見直します。

 

小児では3ヶ月を一つの節目として聴力や鼓膜の状態を評価する

病的な鼓膜変化がみられない小児の滲出性中耳炎では、発症から3ヶ月間の経過観察が推奨されています。また、3ヶ月以上続いても難聴が軽度で鼓膜の病的変化がなければ、さらに注意深く経過をみることもあります。

これは、3ヶ月間受診しなくてもよいという意味ではありません。経過中も中耳の状態や聞こえ、鼓膜の変化を確認し、必要に応じて治療方針を見直します。

3ヶ月以上続く場合には、聴力や鼓膜の状態に加えて、言語・学習・行動や生活の質への影響も考慮しながら、次の対応を検討します。

 

滲出性中耳炎の治療

まず経過観察を行う場合

滲出性中耳炎の治療は、年齢、症状が続いている期間、聴力、鼓膜の状態、日常生活への影響などを踏まえて選びます。小児では、すぐに薬や手術を行わず、まず経過をみる場合があります。

 

小児では自然な改善を待ちながら経過を見ることがある

小児の滲出性中耳炎には、時間の経過とともに改善する例があります。そのため、鼓膜に問題となる変化がなく、聴力や生活への影響を含めて緊急性が高くない場合には、状態を確認しながら経過を見ることがあります。

一方で、聞こえの問題が続いたり、鼓膜の状態が変化したりすれば、治療方針は見直されることがあります。

経過観察になった場合も受診を中断せず、医師から案内された時期に再診しましょう。家庭で気づいた聞こえや生活上の変化を伝えることも大切です。

 

薬による治療

滲出性中耳炎では、「中耳炎だから抗菌薬を飲めば治る」と一括りに考えることはできません。滲出性中耳炎そのものへの対応と、同時に存在する別の病気への治療を分けて考える必要があります。

 

抗菌薬やステロイドを一律に使う病気ではない

日本の小児滲出性中耳炎診療ガイドラインでは、小児滲出性中耳炎そのものへの抗菌薬投与を推奨していません。

2023年のCochraneレビュー*¹では、抗菌薬に短期的な貯留液消失へのわずかな効果があり得る一方、効果と害を含めた不確実性が残るとされています。またステロイドについても、経口ステロイドは滲出性中耳炎の治療にほとんど効果がなく、鼻腔内ステロイドが聴力、生活の質、滲出性中耳炎の持続性に何らかの影響を与えるかは不明とされています。

一方、別の細菌感染症などを合併していれば、その病気に対して薬が必要になる場合はあります。

「滲出性中耳炎に薬が必要か」と「併存する別の病気に薬が必要か」は別の問題です。以前に処方された抗菌薬やステロイドなどを自己判断で使わず、現在の診断に応じて医師の指示を受けてください。

*¹国際的非営利団体コクランが作成・公開しているレビュー

 

合併する鼻副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎は別に治療を考える

鼻副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などが併存している場合には、それぞれの病気に必要な治療を行うことがあります。鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状がある場合には、耳の症状とあわせて医師に伝えましょう。

 

自己耳管通気の方法と位置づけ

自己耳管通気は、耳管を通じて中耳の換気を促す滲出性中耳炎の保存的治療の一つです。

 

バルーンによる自己耳管通気は保存的治療の選択肢

日本の小児滲出性中耳炎診療ガイドラインは、自宅で自己耳管通気用の風船を使う方法を選択肢の一つとして推奨しています。

英国では、自己耳管通気器具(Otovent)を使用して自己耳管通気を行った子どもは、1ヶ月後で47.3%(非実施は35.6%)、3ヶ月後で49.6%(非実施は38.3%)が正常な鼓膜図*²を示したという研究結果もあります。

自己耳管通気は、年齢や実施能力、病状によっては適さない場合もあります。試してみたい場合には、家庭で独自の方法を行うのではなく、使う器具や実施方法について耳鼻咽喉科に確認してください。

*²ティンパノメトリー検査によって鼓膜の動きやすさをグラフ化したもの

 

鼓膜換気チューブ留置術

滲出性中耳炎が長く続き、聴力や鼓膜、発達・生活への影響が問題になる場合には、鼓膜換気チューブ留置術が検討されることがあります。

 

持続期間だけでなく聴力・鼓膜・発達への影響をみて適応を決める

日本の小児滲出性中耳炎診療ガイドラインでは、発症または診断から3ヶ月以上遷延する両側性の滲出性中耳炎について、鼓膜の病的変化、良聴耳30 dBを超える聴力障害、滲出性中耳炎の関与が疑われる言語・学業・行動・QOLなどへの影響をチューブ適応の判断材料としています。

つまり、両側の滲出性中耳炎が3ヶ月以上続いているという理由だけで、自動的にチューブ留置術が決まるわけではありません。

手術を勧められたときは、「何ヶ月続いているか」だけでなく、「聴力はどうなっているか」「鼓膜にはどのような変化があるか」「生活にどのような影響が出ているか」を確認すると、治療の目的を理解しやすくなります。

 

チューブの効果だけでなく耳漏や鼓膜への影響も確認する

鼓膜換気チューブによって中耳の換気が改善し、一定期間、聞こえの改善につながることがあります。一方、2023年のCochraneレビューでは、長期的な利益には不確実性が残るとされています。

また、チューブ留置後には耳漏などが生じる場合があり、鼓膜への影響も含めて経過を確認する必要があります。

手術を検討するときは、期待できる効果だけでなく、起こり得る不利益や術後の通院についても説明を受けたうえで判断しましょう。

方法 位置づけ 主な注意点
経過観察 小児では状態に応じて最初の選択肢となる 鼓膜・聴力・生活への影響を継続して確認する
滲出性中耳炎そのものに抗菌薬やステロイドを一律に使うものではない 合併する感染症や鼻疾患への治療とは分けて考える
自己耳管通気 バルーンなどによる保存的治療の選択肢 短期的利益の可能性はあるが、適応・実施方法の確認が必要
鼓膜換気チューブ 遷延例で聴力、鼓膜、発達・QOLなどを踏まえて検討 利益だけでなく耳漏・鼓膜への影響や術後フォローも確認

 

 

プールなど日常生活で気をつけること

プールは一律に禁止されるのか

「滲出性中耳炎ならプールは禁止」と一律に考えるのではなく、鼓膜換気チューブの有無や現在の耳の状態などを踏まえて判断します。

とくにチューブ留置中の水泳では、状況に応じた注意が必要です。

 

チューブ留置中でも常時の耳栓が必須とは限らない

日本の小児滲出性中耳炎診療ガイドラインでは、鼓膜換気チューブ留置中の水泳時に常時耳栓を使わせることは勧めていません。

一方で、湖や海での水泳、プールでの深い潜水、バスタブでの潜水などは避けるよう指導し、これらが避けられない場合や水泳に伴って耳痛・耳漏を繰り返す場合には耳栓を使用するという条件が示されています。

したがって、「チューブが入っているから必ず耳栓」「チューブがあっても何をしてもよい」のどちらでもありません。

「プールに入ってよいか」は、現在の耳の状態や予定している活動を主治医に伝えて確認してください。

 

家庭で観察したい聞こえと耳の変化

家庭では、耳の痛みだけでなく、聞こえ方や日常の反応にも目を向けましょう。

呼びかけに気づきにくい、聞き返しが増えた、テレビの音量が以前より大きいといった変化が続く場合には、受診時に具体的に伝えると状態を把握する手がかりになります。

子どもでは、家庭だけでなく園や学校での様子も参考になります。また、経過観察中であっても、気になる変化があれば次の定期受診まで必ず待たなければならないという意味ではありません。必要に応じて耳鼻咽喉科へ相談してください。

 

まとめ

滲出性中耳炎は、中耳に液体がたまり、聞こえに影響することがある病気です。子どもでは耳の痛みが目立たず、周囲が聞こえや行動の変化から気づくことがあります。

小児では、鼓膜や聴力などの状態によっては経過観察が選ばれ、3ヶ月を一つの節目としてその後の対応を検討します。薬を一律に使う病気ではなく、必要に応じて自己耳管通気や鼓膜換気チューブ留置術などが検討されます。

一方、大人の滲出性中耳炎は小児と同じ前提で判断しません。とくに片側だけに症状が続く場合などは、背景原因を含めた評価が重要です。

聞こえにくさや耳のつまった感じが続いているとき、子どもの反応や言語・学習面で気になる変化があるときは、自己判断だけで経過をみるのではなく、耳鼻咽喉科で鼓膜や聴力の状態を確認しましょう。

 

参考出典

 

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※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。耳の症状にお心当たりがある場合は、自己判断せず耳鼻咽喉科を受診してください。

よくある質問

滲出性中耳炎は自然に治ることがありますか?

子どもでは自然に改善する例があり、鼓膜や聴力などの条件によっては経過観察が選ばれます。ただし、経過観察中も定期的な評価が必要です。

滲出性中耳炎に抗菌薬は必要ですか?

滲出性中耳炎そのものに抗菌薬を一律に使うことは推奨されていません。鼻副鼻腔炎など別の細菌感染症を合併している場合は、その病気への治療として検討されることがあります。

オトヴェントとは何ですか?

バルーンを使って自己耳管通気を行う製品です。すべての患者に適するわけではないため、使用条件を確認し、医療者の指示に従います。

鼓膜換気チューブを入れたらプールには入れませんか?

一律禁止ではありません。一方で、湖・海での水泳、プールでの深い潜水、バスタブでの潜水などは避けるようにし、これらが避けられない場合や水泳に伴って耳痛・耳漏を繰り返す場合には耳栓を使用することが推奨されています。

大人の滲出性中耳炎も子どもと同じですか?

同じ前提では判断しません。成人では背景原因が異なる場合があり、特に片側性・遷延例では原因を含めた評価が重要です。