駆血帯とは
駆血帯の読み方と採血での役割
「駆血帯」は「くけつたい」と読みます。
採血では、上肢などを駆血帯で適度に圧迫し、静脈を確認しやすい状態にして穿刺する血管を選ぶために使用します。
ただし、強く締めればよいわけではありません。駆血する位置や強さ、時間が適切でないと、患者への負担になるだけでなく、採取した検体の測定値に影響する可能性があります。
採血用駆血帯と止血用ターニケットは用途が異なる
「tourniquet」という言葉は、採血で使う駆血帯だけでなく、大量出血時に血流を遮断する止血帯を指すこともあります。
しかし、この2つは目的も使い方も異なります。
この記事で扱うのは、静脈採血や末梢静脈穿刺などで使用する採血用の駆血帯です。大量出血時に使用する救命用止血帯の装着方法や解除方法は対象としていません。
駆血帯の巻き方と適切な駆血
採血用の駆血帯を使用するときは、穿刺予定部位との位置関係、締め付ける強さ、駆血時間を確認します。
特に注意したいのが、必要以上に長く駆血しないことです。
装着する位置と強さ
採血では、穿刺する場所そのものではなく、その中枢側(心臓や胴体に近い方)に駆血帯を装着します。静脈を確認するために必要な圧迫を確保しながら、過度に締め付けないことも重要です。
穿刺部位の7~10cm中枢側に巻く
日本臨床検査医学会の「標準採血法ガイドラインに基づく正しい採血法」では、駆血帯は穿刺予定部位から7~10cm程度中枢側に巻くことが目安とされています。
たとえば肘窩(ちゅうか)付近から採血する場合は、実際に穿刺する位置との距離を確認してから駆血帯を装着します。
患者の体格や血管の状態などによって条件は異なるため、「7~10cm」という数値だけを機械的に当てはめるのではなく、施設の採血手順もあわせて確認してください。
締め付けは約40mmHgを目安にする
駆血する圧は、約40mmHgが目安とされています。
静脈を確認するために必要な圧迫は行いますが、必要以上に強く締め付けることは避けます。
駆血帯の種類によっては、加えている圧を数値で直接確認できないこともあります。その場合は製品の使用方法と施設の標準手順に従って使用します。
「強く巻くほど血管が見えやすくなる」と考えて、締め付けを強めないよう注意が必要です。
駆血する時間と検査値への影響
駆血した状態が長く続くと、血液成分の濃度などが変化し、検査値に影響する可能性があります。
そのため、駆血帯を装着してからの時間を意識しながら採血を進めることが大切です。
長時間の駆血を避け、1分を目安に管理する
駆血時間はできるだけ短くし、1分を超えるような長時間の駆血を避けます。
適切な血管をすぐに確認できない場合や、採血の準備に時間がかかる場合は、駆血した状態のまま操作を続けないようにします。
なお、「1分」という目安は、1分以内であれば検査値に影響しないという意味ではありません。影響の程度は検査項目や条件によって異なります。
必要な器材や採血管をあらかじめ準備してから操作を始めることも、駆血時間を長引かせないためのポイントです。
駆血帯を外すタイミング
駆血帯をいつ外すかは、採血手順の中でも迷いやすいポイントです。
インターネット上では異なる説明が見られることがありますが、採血方法や使用する器具によって前提条件が異なる場合があります。
最後の採血管を抜いた後、抜針前に解除する
日本臨床検査医学会の「標準採血法ガイドラインに基づく正しい採血法」では、必要な採血が終了したら、最後の採血管をホルダーから抜き、その後に駆血帯を解除してから、採血針を抜去します。
順序を整理すると、
- 最後の採血管を抜く
- 駆血帯を外す
- 採血針を抜く
という流れです。
使用する採血器具による違い
駆血帯を解除するタイミングについては、国内外のガイドラインや採血器具の注意事項で表現が異なる場合があります。
背景には、採血管、採血針、ホルダーなどの組み合わせや、想定されている採血手順の違いがあります。
実務では、一般的な目安だけでなく、使用製品の添付文書と施設手順も確認します。
製品の添付文書と施設手順も確認する
実際の採血では、使用する採血針、ホルダー、採血管などの最新の添付文書に加え、所属施設の標準手順も確認してください。
特に真空採血管を使用する場合は、採血管内から患者側への逆流などを防ぐため、製品ごとに注意事項が設定されていることがあります。
記事に書かれた一般的な手順だけで判断せず、実際に使用する器具の条件を確認することが必要です。
駆血帯の種類と選び方
採血用の駆血帯には、さまざまなタイプがあります。
選ぶ際は、見た目や操作感だけでなく、解除方式、素材、ラテックスの有無、清潔管理の方法などを確認します。
| 確認項目 | 確認する内容 | 判断のポイント |
| 解除方式 | ワンタッチ式など、固定・解除の方法 | 施設の採血手順に適合するか |
| 素材・ラテックス | 使用素材、ラテックスの有無 | 製品仕様を確認する |
| 清潔管理 | 再使用の可否、メーカーが示す管理方法 | 施設の感染管理手順と整合するか |
| デザイン | 無地、色柄、キャラクターデザインなど | 機能・素材・清潔管理を確認した後に選ぶ |
ワンタッチ式など解除方式による違い
駆血帯には、ベルトを固定して使用するタイプのほか、ワンタッチで固定や解除ができる製品などがあります。
ただし、ワンタッチ式であること自体が、医療上の性能の高さを示すわけではありません。
実際に使用する環境では、装着・解除の方法を確認し、施設で定められた採血手順に適合する製品を選びます。
また、同じ「ワンタッチ式」と呼ばれる製品でも、構造や素材が同じとは限りません。購入や導入の際は、製品ごとの仕様を確認することが必要です。
素材・ラテックス・清潔管理を確認する
駆血帯を選ぶときは、使用されている素材やラテックスの有無も確認します。
ラテックスを使用していない製品も市販されていますが、製品名や外観だけで素材を判断せず、メーカーが示す仕様を確認してください。
また、繰り返し使用する駆血帯では、清潔管理も重要な確認項目です。
再使用型の駆血帯から微生物が検出された研究は複数報告されており、系統的レビューでも汚染の可能性が整理されています。
一方で、駆血帯から微生物が検出されたことと、それだけを理由に患者に感染が起こることは同じではありません。感染リスクを必要以上に広げて解釈せず、製品と施設で定められた清潔管理を行うことが重要です。
再使用する場合は製品と施設の清潔管理手順に従う
再使用できる駆血帯でも、どのような方法でも洗浄・消毒できるとは限りません。
対応できる方法は材質や構造によって異なるため、メーカーの取扱説明と施設の感染管理手順に従います。
目に見える汚れがある場合だけ対応するのではなく、施設で決められた交換や清潔管理のルールに沿って運用してください。
かわいいデザインを選ぶときの考え方
採血用の駆血帯には、無地の製品だけでなく、色柄のあるものやデザインの商品もあります。
小児科などでは、患者とのコミュニケーションを考え、デザインにも配慮したい場面があるでしょう。
一方で、デザインを優先するあまり、製品の使用条件や素材、清潔管理方法の確認を省くことは避けなければなりません。
まずは施設で使用できる仕様かどうかを確認し、解除方式、素材、ラテックスの有無、清潔管理方法などの条件を満たした製品の中から、好みのデザインを選ぶという順序が適切です。
駆血帯を使う採血で注意したいこと
駆血帯を適切に装着していても、採血中の患者の動作や手順によって検体に影響することがあります。
駆血帯だけに注目するのではなく、採血操作全体を確認することが大切です。
手を何度も握るパンピングは避ける
血管を確認しやすくする目的で、患者に手を強く握ったり開いたりする動作を何度も繰り返してもらう「パンピング」は避けます。
パンピングによって、カリウムなどの測定値に影響する可能性があるためです。
血管を確認する際は、必要以上に手の開閉を繰り返してもらわず、施設の標準採血手順に従ってください。
施設の標準手順と患者ごとの条件を優先する
駆血帯の位置や時間には一般的な目安がありますが、実際の採血では、患者の状態、穿刺部位、使用する器具などの条件がそれぞれ異なります。
そのため、「7~10cm」「約40mmHg」「1分」といった数値だけを覚えて手技を決めるのではなく、施設の採血マニュアル、使用製品の添付文書、患者ごとの状態を確認することが大切です。
採血手技に不明点がある場合は、自己判断で手順を変更せず、施設の責任者や適切な医療専門職に確認してください。
まとめ
採血用の駆血帯は、静脈を確認しやすくするために使用します。
巻く位置は穿刺予定部位から7~10cm程度中枢側、圧は約40mmHgを目安とし、長時間の駆血は避けることが基本です。
日本の標準採血法に基づくホルダー採血では、最後の採血管をホルダーから抜いた後、採血針を抜く前に駆血帯を解除する手順が示されています。ただし、使用する採血器具によって注意事項が異なる場合があるため、最新の添付文書と施設手順を確認してください。
ワンタッチ式やかわいいデザインなど、駆血帯にはさまざまな選択肢があります。製品を選ぶ際は、デザインだけでなく、解除方式、素材、ラテックスの有無、清潔管理方法を確認し、使用環境に合ったものを選ぶことが大切です。
採血用品を選定・運用する際は、施設の標準手順と、実際に使用する製品の公式資料・添付文書を照合して確認してください。
参考出典
- 日本臨床検査医学会「標準採血法ガイドラインに基づく正しい採血法」
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「真空採血管等における使用上の注意等の追加等について」
- World Health Organization. WHO guidelines on drawing blood: best practices in phlebotomy. 2010.
- Chang J, et al. Standards and Practice Guidelines for Venous Blood Collection. Annals of Laboratory Medicine. 2025.
- Szymczyk J, Månsson M, Mędrzycka-Dąbrowska W. Reusable tourniquets for blood sampling as a source of multi-resistant organisms. Frontiers in Public Health. 2023. Systematic review.
- Salgueiro-Oliveira AS, et al. Health professionals’ practices related with tourniquet use during peripheral venipuncture. Revista Latino-Americana de Enfermagem. 2019. Scoping review.
関連製品|CBCターニケット

片手で扱える軽量な駆血帯です。体毛や皮膚を巻き込むことなく、ゴムチューブでの駆血と同様に使用できます。カラフルなデザインで、患者さんの緊張もほぐせるかもしれません。オートクレーブでの滅菌(121℃)に対応しています。
製品名:CBCターニケット
製品ページ:https://meilleur.co.jp/product/tourniquet/
