航空性中耳炎とは?飛行機で耳が痛む原因や対処法について解説します。

航空性中耳炎とは?飛行機で耳が痛む原因や対処法について解説します。

航空性中耳炎は、飛行機の上昇や下降に伴う気圧の変化に、中耳の圧調整が追いつかないことで起こる耳のトラブルです。耳のつまりや軽い痛みは自然に改善することもありますが、強いめまい、明らかな聞こえにくさ、強い耳鳴りなどがある場合は、自己判断で放置せず耳鼻咽喉科を受診する必要があります。

この記事では、航空性中耳炎が起こる仕組みから、飛行中・着陸後の対処法、受診の目安などを整理します。

公開日:2026年9月29日

航空性中耳炎とは

気圧変化で中耳と外気に圧力差が生じる

航空性中耳炎は、飛行機の上昇や下降による気圧変化で、中耳と外気との間に圧力差が生じて起こる中耳の気圧外傷です。

中耳は鼓膜の内側にある空間で、鼻の奥につながる「耳管」を通じて圧力を調整しています。高度が変化したときに耳管が十分に開かないと、中耳と機内の圧力をうまくそろえられません。その結果、鼓膜に圧がかかり、耳のつまりや痛みが生じます。

とくに着陸時は、中耳側へ空気を取り込んで圧を合わせる必要があります。風邪やアレルギー性鼻炎などで鼻がつまっていると耳管が開きにくくなり、症状が出やすくなることがあります。

 

航空性中耳炎でみられる主な症状

主な症状は、耳のつまり、圧迫感、耳痛、聞こえにくさなどです。軽い違和感で済む場合もあれば、強い痛みを感じることもあります。

重い気圧外傷では鼓膜の損傷などを伴うことがあります。ただし、激痛があるという理由だけで「鼓膜が破れた」と判断することはできません。痛みの強さだけでなく、聞こえ方やめまい、耳鳴りの有無も確認することが大切です。

 

航空性中耳炎の英語での呼び方

航空性中耳炎は英語で「aerotitis media」や「barotitis media」と呼ばれるほか、「otic barotrauma」「middle ear barotrauma」と表現されることもあります。

海外の医療機関で相談するときは、病名だけでなく「ear pain during airplane descent」のように、飛行機の下降中に耳が痛くなったことまで伝えると状況を説明しやすくなります。

 

飛行機で耳が痛くなったときの対処法

離着陸中に行う圧平衡

飛行中に耳のつまりや軽い痛みを感じたら、中耳と機内の圧力を合わせることが基本的な対処になります。耳が強く痛くなってからではなく、気圧が変わり始めた段階で早めに対応するのがポイントです。

 

あくびや嚥下で耳管を開き圧を合わせる

まず試しやすいのは、唾液を飲み込む、あくびをする、ガムをかむといった動作です。こうした動きで耳管が開くと、中耳と外部との圧力差が小さくなることがあります。

離着陸中は、耳が完全につまる前からこまめに嚥下やあくびを行うとよいでしょう。

鼻をつまんで口を閉じ、鼻の奥へ穏やかに圧をかける方法(バルサルバ法)も圧平衡に用いられます。

 

オトヴェントなどの自己耳管通気器具で耳抜きを行う

自力で耳管を開くのが難しい場合、専用の器具を使って耳抜きを行う方法もあります。

オトヴェントは、耳抜きを安全に練習するためのバルーンです。専用バルーンで最大圧を調整することにより、鼓膜に負担をかけずに通気を行うことができます。

バルサルバ法で耳抜きをできなかった乗客の約70%がオトヴェントを使用することで耳抜きができるようになったという研究結果もあります*¹。

オトヴェントについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

「Why I designed Otovent」オトヴェントの開発者であるDr.Sven-Eric Stangerupのプレゼンテーション(文字起こし)

*¹Stangerup SE et al. “Point prevalence of barotitis and its prevention and treatment with nasal balloon inflation.” Otology & Neurotology. 2004.

 

強い症状があるときは無理に耳抜きを繰り返さない

耳抜きをしても強い痛みが続く場合や、操作によって症状が悪化する場合は、力任せに繰り返さないでください。

とくに、明らかな聞こえの低下、強いめまい、強い耳鳴りなどを伴うときは、単に「耳が抜けない」だけではない可能性があります。到着後も症状が続く場合は、耳鼻咽喉科で状態を確認してもらうことが大切です。

 

着陸後も耳のつまりや痛みが残る場合

着陸したあともしばらく耳のつまりや軽い痛みが残ることがあります。軽症では自然に改善することも多いため、時間とともに症状が弱くなっているなら経過を見ることがあります。

一方、痛みが強くなる、聞こえにくさが続く、めまいや強い耳鳴りが出るなど、改善しないまま別の症状を伴う場合は、そのまま放置しないでください。

 

放置せず耳鼻咽喉科を受診したい症状

軽い耳痛や耳閉感だけなら自然に改善することも多い

航空性中耳炎は軽症であれば、飛行後に気圧が安定するにつれて自然に改善することがあります。

軽い耳のつまりや痛みだけで、時間とともに症状が弱くなっている場合は、必ずしも緊急性が高いとは限りません。ただし、「放置すれば必ず治る」と考えるのは避けましょう。

経過を見る場合も、痛みや聞こえ方が改善しているか、新しい症状が出ていないかを確認してください。

 

難聴・めまい・強い耳鳴りなどは早めに受診する

強い、または持続するめまい、明らかな聞こえの低下、強い耳鳴りなどがある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することが重要です。

こうした症状では、中耳だけでなく内耳への影響なども含めて専門的な確認が必要になる場合があります。症状だけをもとに、自分で原因や重症度を決めることはできません。

強い耳痛が長く続く場合や、症状が改善せず日常生活に支障が出ている場合も、受診を検討してください。

 

市販薬を使う前に知っておきたいこと

鎮痛薬と鼻づまりを改善する薬は目的が異なる

「航空性中耳炎に市販薬は効くのか」と考える人もいるでしょう。ただし、市販薬はすべて同じ目的で使うものではありません。

痛みを和らげるための鎮痛薬と、鼻づまりを改善する目的の薬では役割が異なります。また、鼻づまりに使われる薬であっても、航空性中耳炎そのものを治療する薬とは限りません。

医薬品は成分によって、使用できない人や注意が必要な人がいます。持病がある人、ほかの薬を使用している人、子どもに使う場合などは、製品の添付文書を確認し、必要に応じて薬剤師や医師へ相談してください。

 

成人の経口プソイドエフェドリンに関する予防研究

成人を対象にした研究では、経口プソイドエフェドリン*²を飛行前に使用した群で、航空機による耳の気圧外傷症状が少なかったという報告があります。システマティックレビュー*³でも、成人の経口プソイドエフェドリンについては一定の予防効果を支持するエビデンスが示されています。

*²鼻づまりや鼻の充血を和らげるために使われる血管収縮薬
*³同じテーマに関する既存の文献を網羅的に収集・評価する方法

 

研究結果をすべての市販薬やすべての人に一般化しない

プソイドエフェドリンを含む医薬品には、使用できない人や慎重な使用が必要な人がいます。日本の一般用医薬品でも、高血圧、心臓病、甲状腺機能障害、糖尿病などに関連した使用上の注意があります。

つまり、研究で予防効果が報告されていることと、「自分が搭乗前に服用してよい」という判断は別です。

予防目的で薬を使いたい場合は、製品名だけで選ばず成分を確認し、持病や服用中の薬も含めて薬剤師や医師へ相談してください。

 

子どもや持病のある人は自己判断で予防薬を使わない

成人で得られたプソイドエフェドリンの研究結果を、そのまま子どもへ当てはめることはできません。システマティックレビューでも、小児で成人と同じ予防効果が確認されているわけではありません。

子どもの航空性中耳炎対策では、まず授乳や飲水、嚥下、自己耳管通気器具など、年齢に合った方法で圧平衡を促すことを考えます。薬剤には年齢や健康状態による制限があるため、予防目的で自己判断による服用を追加しないようにしてください。

成人でも、高血圧や心疾患などの持病がある場合や、ほかの薬を使用している場合は同様に注意が必要です。

 

次のフライトで航空性中耳炎を予防する方法

鼻づまりを避け離着陸時にこまめに圧を合わせる

航空性中耳炎を予防する基本は、耳管を通じて中耳と外部の圧力を調整しやすい状態を保つことです。

離着陸時には眠ったままにせず、嚥下、あくび、咀嚼などをこまめに行います。自力で耳抜きが難しい場合は、自己耳管通気器具の使用も選択肢になります。耳が完全につまってから対処するのではなく、高度が変わり始めた段階から意識しておくとよいでしょう。

また、風邪や副鼻腔の症状、強い鼻づまりがあると、耳管による圧調整が難しくなることがあります。症状が強い場合は、可能であれば搭乗自体を延期できないか検討することも予防策の一つです。

薬による対策が必要かどうかは、鼻づまりの原因や持病によっても異なります。

 

まとめ

航空性中耳炎では、耳の痛みだけで重症度を決めるのではなく、症状の種類と経過をあわせて考えることが大切です。

飛行中に軽い耳のつまりや痛みが出た場合は、嚥下やあくび、自己耳管通気器具などで中耳と外部の圧力を合わせます。着陸後に症状が徐々に改善しているなら、軽症では自然に治まることもあります。

一方、強い、または持続するめまい、明らかな聞こえの低下、強い耳鳴りなどがある場合は、自己判断で放置せず耳鼻咽喉科を受診してください。

次回の搭乗前には、鼻づまりが強い状態をできるだけ避け、離着陸時の圧平衡を早めに始めることが基本です。

飛行機に乗るたびに強い耳痛が起こる、耳抜きがうまくできない、搭乗後の聞こえにくさが繰り返される場合は、市販品だけで対策を完結させず、次回の搭乗前に耳鼻咽喉科で相談することを検討してください。

 

参考出典

 

関連製品|オトヴェント

耳抜きを安全に練習するためのバルーンです。専用バルーンで最大圧を調整することにより、鼓膜に負担をかけずに通気を行うことができます。滲出性中耳炎の症状緩和を目的とした自己耳管通気に使用しますが、他にも飛行機の離着陸時や高気圧酸素治療時、ダイビング等の耳抜きが必要なシーンで耳抜きの練習をサポートします。

販売名:オトヴェント
区分:一般医療機器
届出番号:12B1X00003ABIGOM
製造販売業者:株式会社名優
製品ページ:https://meilleur.co.jp/product/otovent/

 

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※本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。難聴・めまい・強い耳鳴りなどの症状がある場合は、耳鼻咽喉科へご相談ください。

よくある質問

航空性中耳炎とは何ですか?

航空性中耳炎は、飛行機の上昇や下降に伴う気圧の変化に、中耳の圧調整が追いつかないことで起こる耳のトラブルです。

航空性中耳炎は放置しても治りますか?

軽症では自然に改善することも多くあります。ただし、難聴、強い・持続するめまい、強い耳鳴りなどがある場合や、症状が改善しない場合は耳鼻咽喉科の受診が必要です。

航空性中耳炎に市販薬は使えますか?

薬の成分と目的によります。成人の経口プソイドエフェドリンには予防効果を示した研究がありますが、すべての市販薬やすべての人に適するわけではありません。持病や併用薬も含め、添付文書を確認し、必要に応じて薬剤師や医師へ相談してください。

飛行機での耳抜きにオトヴェントは使えますか?

オトヴェントは耳抜きの練習をサポートする器具です。着陸後に耳の圧が抜けなかった乗客を対象にした研究では、約7割で中耳の圧が解消したという報告がありますが、効果には個人差があります。

航空性中耳炎は英語で何といいますか?

「aerotitis media」「barotitis media」のほか、「otic barotrauma」「middle ear barotrauma」などの表現があります。