JOURNAL

再生処理の知識

【検証試験】適切な過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CIの選択

【検証試験】適切な過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CI選択

過酸化水素ガス滅菌では、包装内部の滅菌工程を確認するためにタイプ4CI(ケミカルインジケータ)が使用されます。一方、滅菌器には器材の形状や構造に応じて複数のプログラムが設定されており、「どのタイプ4CIを選べば、より適切に滅菌工程をモニターできるのか」と迷うこともあるのではないでしょうか。

 

本記事では、過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CIの基本や規格上の位置づけを整理したうえで、検証試験の結果をご紹介します。ハーフサイクルとフルサイクルにおけるCIの変色を比較し、プログラムごとにCIを選択する場合と、全プログラムで共通のCIを使用する場合について考えます。

 

公開日:2026年8月21日

1. 過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CIの概要

1-1. 過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CIとは

過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CIとは、過酸化水素ガス滅菌に使用する包装内部用のCI(ケミカルインジケータ)です。滅菌バッグやラップ材で包装した器材セット、滅菌コンテナの内部に入れて使用します。

タイプ4CIは、マルチバリアブル・インジケータとも呼ばれており、滅菌工程の重要プロセス変数の2つ以上に反応し、一定の曝露条件に曝されると変色します。

過酸化水素ガス滅菌の重要プロセス変数は、①ガス濃度 ②温度 ③時間の3つで、過酸化水素ガス滅菌用のタイプ4CIはこの2つ以上の重要プロセス変数に反応するインジケータです。

過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CIの変色例タイプ4CIの変色事例

 

1-2. 過酸化水素ガス滅菌用の包装内部用CIにはタイプ4しかない

包装内部用CIには、タイプ4、タイプ5、タイプ6の3種類があります。

タイプ4CIは、2つ以上の重要プロセス変数に反応します。タイプ5CIは、すべての重要プロセス変数に反応して、指標菌のD値と関連した反応(BIの死滅とCIの合格が相関)を示します。タイプ6CIも、すべての重要プロセス変数に反応し、指定された滅菌条件を最も精度高く検知します。

ISO 11140-1(Sterilization of health care products — Chemical indicators)において、高圧蒸気滅菌やEOG滅菌用の包装内部用CIには、タイプ4、タイプ5、タイプ6の全てが存在しますが、過酸化水素ガス滅菌用についてはタイプ4CIしか存在しない点に注意が必要です。

包装内部用CIのタイプ分類

分類 名称 特徴
タイプ4 マルチバリアブル・インジケータ 2つ以上の重要プロセス変数に反応する。
タイプ5 インテグレーティング・インジケータ すべての重要プロセス変数に反応する。指標菌のD値と関連した反応をする。
タイプ6 エミュレーティング・インジケータ すべての重要プロセス変数に反応する。合格条件と不合格条件の条件幅が最も狭く、指定された滅菌条件を最も精度高く検知する。

 

ISO 11140-1において規定される各滅菌法のタイプ分類

滅菌工程 重要プロセス変数 タイプ4 タイプ5 タイプ6
蒸気滅菌 温度、時間、湿熱
EO滅菌 ガス濃度、温度、相対湿度、時間
過酸化水素ガス滅菌 ガス濃度、温度、時間
低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌 ガス濃度、温度、時間

 

 

1-3. ISO 11140-1で性能が規定されている

タイプ4CIの性能については、国際規格 ISO 11140-1で規定されています。過酸化水素ガス滅菌用のタイプ4CIに対しては、以下の性能と試験条件が求められています。

過酸化水素ガス滅菌用 タイプ4CIに求められる性能

滅菌工程 試験時間 試験温度 滅菌材濃度 試験結果
過酸化水素ガス SV +0% SV +0℃ SV +0% 合格
SV -25% SV -3℃ SV -25% 不合格

 

例えば、あるタイプ4CIのSV値(規定値)が「50℃、2.3mg/L、6分」だった場合。滅菌時間が4.5分(-25%)であったり、滅菌温度が47℃(-3℃)であった際には、CIは必ず不合格を示すことが求められるといった具合です。

 

1-4. ガイドライン2026でも使用が推奨されている

2026年6月に改訂された「医療現場における滅菌保証のガイドライン2026」においても、「すべての包装に内部用CIを使用することが望ましい」として、その使用が推奨されています。

15.4 日常のモニタリング(包装内部用CI)

各滅菌プロセスに要求されるバリデーションに基づき滅菌が困難と判断された包装、コンテナなどの厳重な包装、手術に供される医療機器を含む包装、フラッシュ滅菌で処理する滅菌物および包装などには必ずCIを使用する。なお、すべての包装に内部用CIを使用することが望ましい。

 

出典:医療現場における滅菌保証のガイドライン2026(p211)

 

2. 過酸化水素ガス滅菌器の滅菌工程

2-1. 減圧と過酸化水素の注入を繰り返す

過酸化水素ガス滅菌器では、まずはコンディショニングで減圧を行い、チャンバー内およびRMDの空気や湿気を除去します。その後、滅菌材である過酸化水素をガス化できる圧力まで減圧し、過酸化水素を注入してチャンバー内に拡散し滅菌します。この滅菌工程を複数回繰り返し、最後にエアレーションをしてチャンバー内およびRMDの過酸化水素ガスを取り除きます。

過酸化水素ガス滅菌の代表的な滅菌サイクルの例

過酸化水素ガス滅菌の代表的な滅菌サイクルの例

出典:医療現場における滅菌保証のガイドライン2026(p161)

 

2-2. 複数のプログラムが設定されている

一般的に過酸化水素ガス滅菌器では、表面形状や簡単な構造のみを有するRMDを短時間で処理するプログラムや、内腔構造や複雑な形状を有するRMDへ滅菌材を浸透させることを目的としたプログラムなど、複数のプログラムが設定されています。

過酸化水素ガス滅菌のプログラム例

プログラム 滅菌時間 滅菌対象物
高速ノンルーメンサイクル 16分 カメラ、バッテリーなど内腔のない器材
ノンルーメンサイクル 28分 硬性内視鏡を含む内腔のない医療器材
フレキシブルサイクル 35分 軟性内視鏡
ルーメンサイクル 52分 内腔のある硬性内視鏡を含む医療器材

 

出典:V-PRO® maX2 低温滅菌システム

 

2-3. 最適なタイプ4CIとは

それぞれのプログラムで、過酸化水素ガス滅菌の重要プロセス変数(ガス濃度・温度・時間)は異なります。

「滅菌時間が短いプログラムで変色するCIで、滅菌時間が長いプログラムもモニターすることができるのか?」という疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、最適なタイプ4CIとは何かを検証するために検証試験を実施しました。

 

3. 検証試験の概要

3-1. 最適なCIを「滅菌工程のできるだけ終盤で変色するもの」と定義

過酸化水素ガス滅菌では、減圧・過酸化水素注入の滅菌工程を複数回繰り返します。そこで本検証試験では、それぞれのプログラムにおいて「滅菌工程のできるだけ終盤で変色するもの」を最適なCIと定義しました。

下記の例の場合、インジケータCが最適ということになります。

滅菌工程のできるだけ終盤で変色するもの

 

3-2. ハーフサイクル/フルサイクル時のCIの変色を検証

滅菌工程中のCIを変色挙動を確認するために、滅菌工程の半分で滅菌を中止するハーフサイクルと最後まで滅菌するフルサイクルを実施し、CIの変色を検証しました。

下記3プログラムに対して、それぞれハーフサイクル/フルサイクルを実施し、CIの変色結果を記録しました。

・高速ノンルーメンサイクル
・フレキシブルサイクル
・ルーメンサイクル

滅菌工程の途中であるハーフサイクルでは不合格を示し、フルサイクルでは合格を示すCIを最適なものと定義しました。

 

3-3. SALWAY 過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CIを使用

本試験では、SALWAYの過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CIを使用しました。SALWAYのタイプ4CIは、複数の異なるSV値をラインアップしており、滅菌器やプログラムに合った最適なものを選択できることが特長です。

製品番号 インジケータの変色 SV値
GKE214-251-ENS(SV6) 赤 → 黄 50℃, 2.6mg/L, 2分
GKE214-241-ENS(SV7) 青 → 緑 50℃, 2.6mg/L, 8分
GKE214-221-ENS(SV9) 青 → 緑 50℃, 3.8mg/L, 20分

 

type4_indicators_h2o2-1

 

3-4. 積載条件

2重ラップで包装し、包装内にCIを設置した器材を上下段に積載。最大積載として検証試験を実施しました。

上下2段に器材を積載した最大積載

 

4. 試験結果

4-1. 高速ノンルーメンサイクルの結果

SV値が最も低いSV6は、ハーフサイクル・フルサイクルともに完全に変色しました。

2番目にSV値が高いSV7は、上段に設置した器材において、ハーフサイクルでは不合格を示し、フルサイクルでは合格を示しました。

最もSV値が高いSV9では、ハーフサイクル・フルサイクルともに不合格を示しました。

高速ノンルーメンサイクル
器材 インジケータ ハーフサイクル フルサイクル
上段 SV6:50℃, 2.6mg/L, 2分
SV7:50℃, 2.6mg/L, 8分
SV9:50℃, 3.8mg/L, 20分
下段 SV6:50℃, 2.6mg/L, 2分
SV7:50℃, 2.6mg/L, 8分
SV9:50℃, 3.8mg/L, 20分

 

4-2. フレキシブルサイクルの結果

SV6は、ハーフサイクル・フルサイクルともに完全に変色しました。

SV7は、上段に設置した器材において、ハーフサイクルでは完全変色せず、フルサイクルでは合格を示しました。

SV9は、上段に設置した器材において、ハーフサイクル・フルサイクルともに不合格を示しました。

フレキシブルサイクル
器材 インジケータ ハーフサイクル フルサイクル
上段 SV6:50℃, 2.6mg/L, 2分
SV7:50℃, 2.6mg/L, 8分
SV9:50℃, 3.8mg/L, 20分
下段 SV6:50℃, 2.6mg/L, 2分
SV7:50℃, 2.6mg/L, 8分
SV9:50℃, 3.8mg/L, 20分

 

4-3. ルーメンサイクルの結果

SV6は、ハーフサイクル・フルサイクルともに完全に変色しました。

SV7は、上段に設置した器材において、ハーフサイクルでは完全変色せず、フルサイクルでは合格を示しました。

SV9は、ハーフサイクルで不合格を示し、フルサイクルでは合格を示しました。

ルーメンサイクル
器材 インジケータ ハーフサイクル フルサイクル
上段 SV6:50℃, 2.6mg/L, 2分
SV7:50℃, 2.6mg/L, 8分
SV9:50℃, 3.8mg/L, 20分
下段 SV6:50℃, 2.6mg/L, 2分
SV7:50℃, 2.6mg/L, 8分
SV9:50℃, 3.8mg/L, 20分

 

 

5. 最適なCIの選定

これらの結果を踏まえて最適なCIを選択する際には、①プログラム毎に異なるCIを選択するパターンと、②全プログラム共通のCIを選択する、2パターンが考えられます。

5-1. パターン①:プログラム毎に異なるCIを選択

SV6では、全てのプログラムにおいて滅菌工程の前半で完全変色してしまうため、後半をモニターすることができません。

高速ノンルーメンおよびフレキシブルにおいてはSV7、ルーメンではSV9が選択することで、より広い範囲の滅菌工程をモニターすることができます。

しかし、実際の運用ではプログラム毎にCIを使い分ける必要があるため、運用が煩雑になるデメリットが生じます。具体的には、中材スタッフが滅菌バッグに入れるCIを間違えるリスクや、(変色結果が異なるCIを併用する場合)器材を使用する看護師が色の違いにより判定を間違うリスクがあります。

    高速ノンルーメン フレキシブル ルーメン
器材 インジケータ ハーフ フル ハーフ フル ハーフ フル
上段 SV6(赤→黄)
SV7(青→緑)
SV9(青→緑)

 

5-2. パターン②:全プログラム共通のCIを選択

SV7を選択することで、1種類のCIで全プログラムをモニターすることができます。

しかし、ルーメンサイクルにおいては、SV9の方がより広い範囲をモニターできる(CIが完全変色するタイミングが遅い)ことに留意する必要があります。

    高速ノンルーメン フレキシブル ルーメン
器材 インジケータ ハーフ フル ハーフ フル ハーフ フル
上段 SV6(赤→黄)
SV7(青→緑)
SV9(青→緑)

 

6. まとめ

今回の検証では、「滅菌工程のできるだけ終盤で変色するCI」を最適なCIと定義し、3種類のタイプ4CIを比較しました。

その結果、本試験条件では、高速ノンルーメンサイクルとフレキシブルサイクルではSV7、ルーメンサイクルではSV9を選択することで、より広い範囲の滅菌工程をモニターできることが確認されました。

一方、運用のしやすさを重視して全プログラムでCIを共通化する場合には、SV7を使用する方法も考えられます。ただし、ルーメンサイクルではSV9の方が完全変色するタイミングが遅く、より広い範囲をモニターできた点には留意が必要です。

タイプ4CIを選択する際は、使用する滅菌器やプログラム、施設内での運用方法も踏まえて検討することが重要です。

 

過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CIに関するお問合せや、各種ご依頼(お見積/サンプルなど)は、営業担当またはSALWAYウェブサイトのお問合せフォームよりご連絡下さい。

SALWAY 過酸化水素ガス滅菌用タイプ4CI

 

この記事をダウンロード  

関連記事