1. 洗浄インジケータとは?
1-1. 洗浄工程の品質は「バリデーション×日常モニタリング」で保証する

洗浄工程の品質は、「バリデーション」と「日常モニタリング」の2つを掛け合わせることで保証します。
バリデーションとは、洗浄が最も難しい器材(マスター製品)が適切に洗浄できる(残留蛋白質量が6.4μg/cm²未満である)工程であることなどを事前に検証する作業です。
一方、日常モニタリングでは、その検証された洗浄工程が、日々の運用の中で確実に実行されているかを毎回確認します。
1-2. 洗浄インジケータは日常モニタリングに使用する試験器具
洗浄インジケータは、この日常モニタリングに使用するツールにあたります。最も洗浄が難しいマスター製品が適切に洗浄できることがバリデーションされた洗浄工程が、確実に実行されているかを洗浄インジケータを使用して日常的にモニタリングします。
1-3. 洗浄インジケータに関するガイドライン等の記載
洗浄インジケータの使用については、「医療現場における滅菌保証のガイドライン2026」や「医療現場における滅菌保証のための施設評価ツールVer.1.1」においても言及されています。
特に施設評価ツールでは、早急な改善が必要な「必須項目」として、機械洗浄工程が正常に終了したことを記録紙・洗浄インジケータ・電子記録などで確認し、記録を保管することが求められています。

参考出典:
医療現場における滅菌保証のガイドライン2026
医療現場における滅菌保証のための施設評価ツールVer.1.1
2. なぜ洗浄インジケータが必要なのか
2-1. 洗浄インジケータの本質は、洗浄工程の異常を確実に検知すること
洗浄インジケータの本質は、洗浄工程になんらかの異常があった際に、それを確実に検知することにあります。逆説的ですが、「不合格の結果が出ること」自体は、異常を正しく検知できているという意味で望ましいことだと言えます。
2-2. 洗剤供給チューブのつまりを検知した事例
SALWAY 洗浄インジケータのユーザーであるA病院では、ある日突然、洗浄インジケータが全く色落ちしないという事象が発生しました。
洗浄器メーカーに点検を依頼したところ、洗剤を供給するチューブが詰まっており、洗剤が吸い上げられていなかったことが判明しました。もし洗浄インジケータを使用していなければ、洗剤が入っていない状態で洗浄された器材が、そのまま次の工程に払い出されてしまうところでした。

2-3. WDがすべてのエラーを検知できるとは限らない
WD(ウォッシャーディスインフェクター)自体が検知できるエラーは、WDの機種によって異なります。
プロペラの故障や過積載による水流不足、プログラム誤選択による洗浄時間・温度の不足、搬送・保管中の洗剤の酵素失活による洗浄力低下といった異常は、WD自体のセンサーでは検知できないことがあります。洗浄インジケータは、こうした「洗浄器では検知できないエラー」を補完的に検知する役割も担っています。

3. 洗浄インジケータの2つのタイプ
3-1. 「疑似血液タイプ」と「顔料タイプ」の2種類に分類される
市場では、さまざまな洗浄インジケータが市販されていますが、市販の洗浄インジケータは大きく2つに分類されます。

1つは疑似血液タイプで、ステインレス等の金属板に羊などの動物血液を塗布したもので、国際規格ISO15883-5で規定されています。
2つめは顔料タイプで、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの基盤の上に顔料などでつくられたテストソイルが塗布されたものです。顔料タイプの洗浄インジケータについての国際規格はなく、製品仕様はメーカーが独自に定めています。
| 疑似血液タイプ | 顔料タイプ | |
| 構造 | ステンレスなどの金属板に動物血液を塗布 | PET(ポリエチレンテレフタレート)などの基盤に顔料(テストソイル)を塗布 |
| 国際規格 | ISO 15883-5 で規定 | 国際規格なし(仕様はメーカーにより異なる) |
3-2. よくある誤解「色が落ちている=器材も洗えている」ではない
洗浄インジケータに関するよくある誤解として、「洗浄インジケータの色が落ちているから、一緒に洗浄した器材も洗えている」というものがあります。
しかし、疑似血液タイプであれ顔料タイプであれ、洗浄インジケータはあくまで「洗浄工程」を評価するものであり、器材そのものが洗えているかどうかを直接評価するものではありません。
【洗浄インジケータが色落ちした場合】
疑似血液/テストソイルを洗い落とせるだけの洗浄工程であったことを意味します。ただし、これは一緒に洗浄した器材も洗浄できていることを直接評価するものではありません。
【洗浄インジケータが色残りした(本来は色落ちするはずが色が残った)場合】
洗浄工程になんらかの異常があり、洗浄力が低下したことを意味します。この場合、一緒に洗浄した器材も洗浄できていない可能性があります。
つまり洗浄インジケータの役割は、「洗浄工程に異常がないか」を検知することにあり、器材の洗浄状態そのものを評価するものではない、という点を正しく理解しておく必要があります。
4. 「適切な」洗浄インジケータの選び方
4-1. 洗浄器/プログラムの洗浄力に最も近い抵抗性を持つ洗浄インジケータを選ぶ
では、数ある製品の中から、どのように洗浄インジケータを選べばよいのでしょうか。基本的な考え方は、使用している洗浄器/洗浄プログラムの洗浄力に、最も近い抵抗性を持つ洗浄インジケータを選ぶことです。

洗浄器のメーカーや使用する洗剤によって、それぞれが発揮する洗浄力は異なります。抵抗性が低すぎる(洗い落ちやすい)洗浄インジケータを使ってしまうと、洗浄力が大幅に低下しない限り不合格が出ず、わずかな異常を見逃してしまいます。
反対に、洗浄力に見合った抵抗性を持つ洗浄インジケータを使用すれば、わずかな洗浄力の低下でも検知できるようになります。
4-2. 洗浄作用が最も高くなるのは、本洗浄工程の終了時
洗浄作用は、①機械的作用(水流)、②時間、③温度、④化学的作用(洗剤)の4つの要素で構成されます(シナー・サークル)。
WD(ウォッシャーディスインフェクター)における洗浄作用は、洗剤が投入され、温度が上昇した洗浄液がプロペラから規定の時間噴射され続けた「本洗浄工程の終了時(下図のD時点)」に最も高くなります。

4-3. 本洗浄が終了するギリギリのタイミングで色落ちするインジケータを選択する
複数の洗浄インジケータから適切なものを選びたい場合は、それらを横並びに配置したうえで洗浄プログラムをスタートさせ、本洗浄終了ぎりぎりのタイミングで色落ちしたもの(最も遅く色落ちしたもの)を選択するのが実践的な方法です(下図の場合は青)。
これにより、その洗浄器・洗浄プログラムの洗浄力に最も近い抵抗性を持つ、適切な洗浄インジケータを選定できます。

4-4. 同じWDでもプログラム毎に最適なインジケータは異なることがある
なお、同じ洗浄器であっても、使用するプログラム(例:中性酵素洗剤/アルカリ洗剤)によって洗浄力は違うため、最適な洗浄インジケータは異なることがあります(下記例では、中性酵素は緑、アルカリは青が最適)。運用しているすべての洗浄プログラムに対して、個別に選定を行うことが望まれます。

4-5. 参考動画
適切な洗浄インジケータの選択方法については、こちらの動画も参考にしてください。
5.よくある質問(FAQ)
Q. 酵素洗剤とアルカリ洗剤で、1種類の洗浄インジケータを共通運用することはできますか?
例えば、中性酵素プログラムがは黄色のみが色落ちし、アルカリプログラムが黄色→緑色の順番に色落ちした場合。中性酵素は黄色、アルカリは緑色が最適なインジケータとなりますが、どうしても1種類に絞る必要がある場合、選び方は2つあります。

1つは、より抵抗性の低い(易しい)洗浄インジケータに合わせる方法です(①)。この場合、双方の洗剤で完全に色落ちするため合否判定は容易ですが、洗浄力が強いプログラム側でモニタリングできる範囲が狭くなります。
今回の例では、アルカリ洗剤のプログラムを中性酵素に合わせて黄色でモニターする場合、緑色を使用すれば本洗浄工程の中盤までモニターできますが、黄色を使用すると黄色でハイライトした範囲までモニターできる範囲が狭くなります。

もう1つは、より抵抗性の高い(難しい)洗浄インジケータに合わせる方法です(②)。この場合、モニタリングできる範囲は広がりますが、合否判定の難易度が上がる点に注意が必要です。
今回の例では、酵素洗剤・アルカリ洗剤ともに緑色でモニターする場合、下記のような合格基準となります。洗浄インジケータの判定者が複数人にわたる場合、判定者によって合否判定がぶれてしまう可能性があるため注意が必要です。
原則としては、洗剤ごと・プログラムごとに適した洗浄インジケータを個別に選定することが推奨されます。

Q. 洗浄インジケータはどのくらいの頻度で使用すればよいですか?
エラーはいつ発生するか予測できないため、洗浄工程を実施するたびに毎回使用することが望ましいです。使用頻度が少ないほど、不合格が発覚した際にさかのぼって回収(リコール)すべき範囲が広くなってしまう点に注意が必要です。
例えば、インジケータを毎回使用していれば、不合格時にリコール対象を該当バッチのみに限定できます。しかし、1日1回のみの使用では、前回インジケータを使用したバッチ以降のすべてがリコール対象となってしまいます。

Q. 洗浄力を高めるにはどうすればよいですか?
前述のシナー・サークルの4要素(機械的作用・時間・温度・化学的作用)を調整することで、洗浄作用を強めることができます。
一般的には、以下のような対応が洗浄作用を強める方向に働きます
・スプレーの流量(水流)を増やす
・洗浄時間を長くする
・温度を上げる
・洗浄作用の強い洗剤(アルカリ洗剤など)を使用する
ただし、酵素を含む洗剤は高温下で酵素が失活し、かえって洗浄力が低下する場合があるため、洗剤の特性に応じた温度管理が必要です。
より詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
「シナー・サークル」とは?洗浄インジケータの色落ち結果をもとに、シナー・サークルが洗浄作用に与える影響について解説します。
6. まとめ
洗浄インジケータは、洗浄工程が確実に実行されているかを日常的に確認するためのツールであり、器材そのものの洗浄状態を直接評価するものではありません。
適切な洗浄インジケータを選ぶ基本は、使用する洗浄器・洗浄プログラムの洗浄力に最も近い抵抗性を持つ製品を選定することです。疑似血液タイプ/顔料タイプという製品特性の違いや、洗剤・プログラムごとの選定の必要性を理解したうえで、自施設に合った洗浄インジケータの運用を検討する必要があります。
洗浄工程インジケータに関するお問合せや、各種ご依頼(お見積/サンプルなど)は、営業担当またはSALWAYウェブサイトのお問合せフォームよりご連絡下さい。







