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再生処理の知識

【洗浄・高圧蒸気滅菌の日常モニタリング】ガイドラインや施設評価ツールを踏まえたポイントを解説します。

コンパクトPCD

202110月に『医療現場における滅菌保証のガイドライン2021』、20227月には『医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール』が発行されました。

 

これを受けて、どのように対応したらよいか、悩まれているご施設様が多いのではないでしょうか。

 

本記事では、洗浄と高圧蒸気滅菌において、ガイドラインの変更点や施設評価ツールを踏まえた日常モニタリングのポイントを解説いたします。

 

この記事を読めば、ガイドラインや施設評価ツールにおける日常モニタリングに関する要旨、日常モニタリングの基本的な考え方を押さえることができます。

更新日:2024年7月12日
公開日:2023年7月4日

目次

1. 中央材料室を取り巻く大きな流れ

1-1. 『医療現場における滅菌保証のガイドライン2021』の日常モニタリングに関する記載

2021年のガイドライン改訂により、中央材料室は運用変更およびコスト増の問題に直面しています。ガイドライン2021における日常モニタリングに関する項目の抜粋は以下の通りです。

項目 2015年 2021年
ボウィー・ディックテスト 毎日(A) 必ず毎日
包装内インジケータ(CI) 全ての包装物(B) 全ての包装物
BI 毎日望ましくは毎回(B) 毎日好ましくは毎回

出典: 医療現場における滅菌保証のガイドライン2021

ガイドライン2015の勧告レベルは(A)すべての施設で実行すべき項目、(B)可能な限り採用すべき項目、(C)適宜採用すべき項目 を意味していました。しかし、ガイドライン2021ではこれらの勧告レベルは廃止され、原則としてすべての施設においてガイドラインに記載された項目を守ることが求められています。

適切に日常モニタリングを実施することは、非常に重要です。一方で、中央材料室は日常モニタリングに関する消耗品のコスト増が余儀なくされたとも言えます。

再生処理の質向上に向けて「何のコストを削り、何に投下するのか」といった優先順位付けが、より重要になっています。

 

1-2. 『医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール』の日常モニタリングに関する記載

施設評価ツールは、2022年7月に日本医療機器学会から発行された、自施設の業務レベルを客観的に評価するためのツールです。

本評価ツールは、医療現場で働くスタッフが、自施設の業務レベルを客観的に評価し、適切に行えている点、不足している点を認識し、そのレベルを改善するための手段として、日本医療機器学会の滅菌管理業務検討委員会が策定したものである。

[施設評価ツールより抜粋]

 

下記は施設評価ツールにおける日常モニタリングに関する質問項目を抜粋したものです。

項目 質問No. 質問内容 必須項目
洗浄インジケータ 9 機械洗浄工程が正常に終了したことを記録紙、洗浄インジケータ、
電子記録などで確認し、記録を保管していますか?
ボウィー・ディックテスト 22 蒸気滅菌器を使用する前に、滅菌器ごとにボウィー・ディックテストを毎日実施していますか?
包装内インジケータ(CI) 26 包装内部用化学的インジケータ(タイプ4, 5, 6のいずれか)を
包装材内部に設置していますか?
 
BI 27 蒸気滅菌用に開発された生物学的インジケータを少なくとも1日1回以上、もしくは毎回使用していますか?
PCD 33 生物学的インジケータは、各滅菌法で規定されたPCD内部に挿入、
又は市販のテストパックを使用していますか?

出典:医療現場における滅菌保証のための施設評価ツールVer1.01

 

施設評価ツールにおいても、日常モニタリングに関して多くの必須項目(早急に改善が必要な項目)が設定され、早急な対応が求められていることがわかります。

次章以降では、それぞれの日常モニタリング(洗浄インジケータ、ボウィー・ディックテスト、包装内インジケータ(CI)、BI、PCD)について詳しく解説していきます。

 

2. 洗浄インジケータ

2-1. 洗浄なくして滅菌なし

高圧蒸気滅菌による菌の殺滅は、適切な洗浄があって初めて成立します。医療器材の再生処理において、洗浄工程は非常に重要なプロセスです。

洗浄工程が重要な理由の一つに、バイオバーデンの問題があります。

国際規格ISO/TS 17665-2には、滅菌温度に対する保持時間の条件が示されています。この蒸気滅菌条件は、10⁶個の菌を滅菌することを前提としています。例えば、10⁶個の菌を滅菌するためには、121℃の蒸気の場合、15分必要ということを意味しています。

蒸気滅菌条件(ISO/TS 17665-2)

滅菌温度 保持時間
121℃ 15分
126℃ 10分
134℃ 3分

 

洗浄が適切に行われた場合は、バイオバーデン(滅菌が開始される時点での菌数)が10⁶個を下回るため、15分の滅菌で余裕をもってSAL≦10⁻⁶を達成することができます。一方で、洗浄が不十分だった場合。バイオバーデンが10⁶個を上回ってしまい、15分で滅菌してもSALに到達しない=滅菌不良となってしまう可能性があります。

また、そもそも汚染物が付着した器材表面には、蒸気は曝露せず滅菌することができません。滅菌されたとしても、パイロジェンなどの発熱物質が残ってしまうことが問題です。

 

器材の再生処理における洗浄工程の重要性

 

2-2. 洗浄工程モニタリングはバリデーション+日常モニタリング

洗浄工程のモニタリングは、バリデーションと日常モニタリングで構成されます。バリデーションにより、最も洗浄しづらい器材が洗浄できる洗浄工程である事を検証します。そして、その検証された工程が毎回確実に実行されているかを日常モニタリングします。

この日常モニタリングに使用するのが、洗浄インジケータ/洗浄工程インジケータです。

洗浄工程モニタリングの基本的な考え方

 

2-3. ウォッシャー・ディスインフェクター(WD)では検知できないエラーもある

日常モニタリングで洗浄工程インジケータ(CPI)を使用する一番の理由は、WDでは検知できないエラーが存在するためです。

WDを使用した機械洗浄の洗浄力は、機械作用・温度・化学作用・時間の4つの重要項目で構成されます。これらの重要項目に関連した洗浄時に起こり得るエラーは、下記のようなものがあります。

項目 起こり得るエラー WDによる検知 CPIによる検知
機械作用 過積載により水流が当たらない ×
温度 誤ったプログラムの選択により、必要な温度に達しない ×
化学作用 搬送または保管中に洗剤の酵素が失活し洗浄力が低下 ×
時間 誤ったプログラムの選択により必要な時間洗浄できていない ×

 

ポイントは、これらのエラーはWDでは検知できないという点です。仮に誤ったプログラムを選択してしまったとしても、WDはオーダーされたプログラムでエラーを出すことなく、指示通りに稼働します。

ヒューマンエラーを含めた様々なエラーを確実に検知するために、インジケータを用いた日常モニタリングは非常に重要です。

 

2-4. WDの洗浄力に最も近い抵抗性をもつインジケータを選ぶ

洗浄工程インジケータを選択する際には、2つのポイントがあります。1つ目は、「WDの洗浄力に最も近い抵抗性をもつインジケータを選択すること」です。

洗浄力は、使用する機械や洗剤、プログラムによって異なります。インジケータの役割は、本来発揮すべき洗浄力が何らかの不具合で低下した時に、確実に検知すること。WDの洗浄力により近い抵抗性をもったインジケータを使用することで、わずかな不具合を検知することができます。

例えば、下の図のWD①の場合。黄色の抵抗性のインジケータで日常モニタリングを実施すると、洗浄力が大幅に(黄色矢印分)低下した時しか検知することができません。

一方で、洗浄力に近い赤色のインジケータでモニタリングすれば、洗浄力がわずかに(赤色矢印分)低下した時点で、異常が発生していることを検知できます。WD①場合、赤色のインジケータが最適ということになります。

WDの洗浄力に最も近いCPIを選ぶ

 

2-5. 本洗浄でのみ色落ちするインジケータを選ぶ

インジケータを選択する際の2つ目のポイントは、「本洗浄のみで色落ちするインジケータを選択すること」です。

4つの重要項目の1つである洗剤(化学作用)は、洗浄力に大きな影響力を与えます。インジケータは、洗剤チューブの詰まりなどの洗剤関連の不具合も確実に検知しなければなりません。

予備洗浄などの洗剤を使用しない工程で色落ちしてしまうインジケータでは、洗剤関連の不具合を見落とす可能性があります。洗剤関連の不具合を確実に検知するためには、本洗浄のみで色落ちするインジケータを選択する必要があります。

本洗浄でのみ色落ちするCPIを選ぶ

 

2-6. SALWAYの洗浄工程インジケータは5種から「選択」する

SALWAYの洗浄工程インジケータ(CPI)は、業界唯一の選択式インジケータです。5種の異なる抵抗性のインジケータから、施設に適したインジケータを選択します。

「洗浄器」「洗剤」「プログラム」「水質」など、洗浄に関する要因の組み合わせは施設によって異なります。WDの洗浄力に最も近い抵抗性をもつCPIを選択することで、日常のわずかな不具合を確実に検知します。

洗浄工程インジケータ

SALWAY 洗浄工程インジケータ

 

また、内腔洗浄ポートに接続してインジケータを設置できる「内腔洗浄フローPCD」を使用することで、チューブなどの内腔器材の洗浄工程を確認することができます。内腔器材の内部まで洗浄できているかは、バスケットに設置されたインジケータでは確認することができません。専用のフローPCDを使用して、きちんとモニタリングすることが大切です。

フローPCD

 

2-7. 同じWDでも、洗剤やプログラムによって最適なインジケータは異なる

たとえ同じWDを使用していたとしても、洗剤やプログラムが異なれば、最適なインジケータは異なることがあります。こちらは、実際の医療機関で実施した洗浄工程インジケータの選定試験の結果です。

実際の医療機関でのCPIの選択試験

同じWDでも、弱アルカリ酵素洗剤を使用するプログラムでは黄色、アルカリ洗剤を使用するプログラムでは紫色のインジケータが最適という結果でした。

プログラムが複数ある場合は、それぞれのプログラムでインジケータの選定試験を実施しましょう。

 

2-8. インジケータにより洗剤供給チューブの詰まりを検知

こちらは、日常モニタリングに洗浄工程インジケータを使用する重要性がわかる事例です。

この医療機関では、もともとインジケータを使用していませんでした。アルカリ洗剤プログラムを使用しており、X月6日のインジケータ選定試験の結果、紫色のインジケータが最適という結果がでました。そこからわずか2週間以内に、インジケータが全く変色しないという事象が発生しました。

洗浄器メーカーに依頼し調査してみると、なんとアルカリ洗剤を供給するチューブが詰まっていたことが発覚。インジケータを使用していなければ、洗剤が供給されていない状態で洗浄した器材を、滅菌して払い出すところでした。

このように、洗浄工程の不具合はいつ発生するかわかりません。洗浄工程インジケータを用いた日常モニタリングは、毎回実施する必要があります。

CPIによる洗剤関連の不具合検知事例

 

3. ボウィー・ディックテスト

3-1. 毎日の始業時に、滅菌器の空気除去性能を確認するテスト

ボウィー・ディックテストは、朝の暖機運転後に実施する、滅菌器の空気除去性能を確認するテストです。空の滅菌器内のコールドスポットにボウィー・ディックテストを置き、中のインジケータに134℃の蒸気が3.5分曝露しているかを確認します。

その日の滅菌器がきちんと稼働するかを確認する、とても重要な手順です。

ボウィー・ディックテストとは

 

3-2. 滅菌器内や蒸気配管内に空気が残存している場合に不合格を示すことが重要

ボウィー・ディックテストが不合格を示した場合には、以下のような不具合が想定されます。

・扉パッキンの劣化
・真空ポンプ性能の低下
・蒸気配管からの空気漏れ など

これらの不具合が発生している状態だと、下図の赤線のようになる可能性があります。本来求められる水準である134℃ 3.5分が達成されない、そのまま滅菌器を稼働させたとしても医療器材を適切に滅菌出来ない可能性があるということです。

つまり、ボウィー・ディックテストの本質は、滅菌器や蒸気配管内に空気除去や蒸気浸透に関する不具合があった際に確実に検知することです。簡単に合格するのではなく、滅菌器になんらかの不具合が発生している際にきちんと不合格を示すことが求められます。

 

ボウィー・ディックテストに求められる性能

 

3-3. SALWAYのボウィー・ディックテストは高い検知力でわずかな不具合も確実に検知

SALWAYのボウィー・ディックテストは、EN ISO11140-4(7kgコットンテストパック)に適合し、高い不具合検知力を有します。本体はリユースで8,000回以上使用でき、インジケータがコンパクト(63×6mm)でゴミも少なく、記録台帳や在庫がかさばりません。

ボウィー・ディックテスト

SALWAY ボウィー・ディックテスト

 

3-4. 市販のボウィー・ディックテストの比較検証

ある医療機関が、規格品(コットンパック原法)と市販の各社製品を比較検証した結果が下記の表です。

ボウィー・ディックテストの検知力を検証する方法として、真空引き(空気除去)をわざと甘くして、滅菌条件を悪くする方法があります。空気除去が甘かった際に、ボウィー・ディックテストがきちんと不合格を示すかを確認する試験です。

SALWAYのボウィー・ディックテストは、欧州規格に適合しており検知力が高いため、真空パルスを2回にした際にきちんと不合格を示したことが確認されています。

 

ボウィー・ディックテストの比較検証

 

4. 包装内インジケータ(CI)

4-1. 包装内CIは、器材表面への蒸気曝露をモニタリングする

包装内CIは、滅菌バッグやコンテナに同梱し、器材表面への蒸気曝露をモニタリングするインジケータです。

包装内CIは、それが置かれた場所の情報しか得ることができません。インジケータを器材の内部に挿入することはできないため、器材内部までの蒸気浸透を確認するのは、後述するPCDにインジケータを挿入する必要があります。

滅菌バッグとタイプ5CI

 

4-2. 包装内CIには、タイプ4、タイプ5、タイプ6の3種類がある

包装内CIは、国際規格ISO11140-1によって、下記に示す3つのタイプに分類されています。どのタイプを選択するかは、検証できる重要プロセス変数とコストのバランスを考慮することが重要です。

ISO11140-1による化学的インジケータのタイプ分類

分類 名称 用途・特徴
タイプ4 マルチバリアブル・インジケータ 2つ以上の重要プロセス変数に反応する
タイプ5 インテグレーティング・インジケータ すべての重要プロセス変数に反応する。指標菌のD値と関連した反応をする
タイプ6 エミュレーティング・インジケータ すべての重要プロセス変数に反応する。合格条件と不合格条件の条件幅が最も狭く、指定された滅菌条件(SV)を最も精度高く検知する

 

4-3. タイプ5CIは、すべての重要プロセス変数に反応する

タイプ5CIは、蒸気滅菌におけるすべての重要プロセス変数(温度・時間・飽和蒸気)に反応します。一方のタイプ4CIは、国際規格において、2つ以上の重要プロセス変数に反応するように求められています。

タイプ4CIの中には、飽和蒸気に反応しないものも存在するので、そのインジケータがどの変数に反応するのか、確認した上で使用する必要があります。飽和蒸気に反応しないものは、極端に言えば乾熱でも変色してしまう可能性があるということになります。

タイプ4とタイプ5の違い

 

4-4. タイプ5CIは指標菌(BI)の死滅に相関する

またタイプ5CIは、国際規格において、指標菌(BI)の死滅に相関することが要求されています。つまり、タイプ5CIが合格すれば、BIは必ず合格するという事です。

下記グラフの例の場合、タイプ5CIは134℃の蒸気が2.55分以上曝露すると合格を示し始めますが、BIは134℃の蒸気が1分以上曝露すれば必ず合格を示すことがわかります。

タイプ5CIは指標菌(BI)の死滅に相関する

 

4-5. SALWAYのタイプ5CIは、大容量で経済的

SALWAYのタイプ5CIは、国際規格 EN ISO11140-1タイプ5に適合しています。3,200枚の大容量で、低コストを実現しています。インジケータの裏面はシール状になっており、糊付けせずにそのまま貼って記録することができます。

タイプ5CI

SALWAY 高圧蒸気滅菌用タイプ5CI

 

5. BI

5-1. BIは指標菌の死滅で滅菌のモニタリングを行う

BIは、指標菌の死滅で滅菌のモニタリングを行う方法です。器材と一緒に滅菌した指標菌が死滅していれば、実際の菌も死滅していると推定する考え方です。滅菌後に菌の培養を行い、結果を判定します。

BI

BIには指標菌の死滅を確認するタイプと、死滅を予測する短時間判定タイプがあります。BIの種類の違いについては下記の記事をご覧ください。

(記事)【第1種滅菌技師が解説】BIの判定方法の種類とその違い

 

5-2. ガイドライン2021に対応するためには、BIの使用頻度は1日1回でよい

『医療現場における滅菌保証のガイドライン2021』(P219)においては、BIの使用に関して、下記のように記載されています。

15.3 日常のモニタリングにおけるBIの使用

(勧告)
15.3.1 同一滅菌器で複数の滅菌サイクルを使用している場合は、滅菌サイクルごとにBIを使用する
15.3.2 各滅菌法におけるBIの使用
(1)蒸気滅菌用BI
 蒸気滅菌プロセス用に開発されたBIを毎日使用する。好ましくは毎回使用し、BIの判定結果を確認してから既滅菌物の払い出しをおこなう
 インプラント(生体植え込み器具)を滅菌する工程について、BIを毎回使用し、BIの判定結果を確認してから払い出す
 フラッシュ滅菌プロセスについては、フラッシュ滅菌プロセス用に開発されたBIを毎回使用する

 

赤文字で示したように、ガイドライン2021に対応するためには、BIの使用頻度については1日1回(毎日)で大丈夫です。毎回の使用については、あくまで「好ましくは」の記載に留まっています。

大切なのはBIを毎回使用することではなく、滅菌物よりも滅菌抵抗性の高いPCDにいれたインジケータの判定結果をもって、毎回の払い出しを行うことです。詳しくは、6章でお話します。

 

5-3. 施設評価ツールでも、BIの使用頻度は1回でも毎回でも獲得できる点数は変わらない

医療現場における滅菌保証のための施設評価ツール(P5)においては、BIの使用に関して、下記のように記載されています。

27. 蒸気滅菌用に開発された生物学的インジケータを少なくとも1日1回以上、もしくは毎回使用していますか?【必須】
①毎回(1点
②1日1回以上(1点
③1日1回未満(0点)
④パラメトリックリリース(除外)

BIの使用頻度が1日1回であれ、毎回であれ、獲得できる点数は変わらないことがわかります。

 

6. PCD

PCD(Process Challenge Device)は、意図的に蒸気浸透性を悪くする抵抗性を持ったデバイスです。PCDは、BIやCIなどのインジケータではなく、それらをいれる入れ物を指します。

6-1. マスター製品よりも滅菌抵抗性の高いPCDを使用する

PCD(日常の出荷判定用テストパック)の選択について、『医療現場における滅菌保証のガイドライン2021』(P18)で下記のように記載されています。

日常の出荷判定用テストパックの選定

日常の滅菌処理に使用する出荷可否判定用のテストパックは、以下の優先順位で選定する。
①マスター製品にBIおよび/またはCIを設置したもの、②マスター製品に特性が似た製品や模擬製品にBIおよび/またはCIを設置したもの、③市販のPCDにBIおよび/またはCIを設置したもの。
②または③を使用する時には、これらが①と同等以上の滅菌抵抗性であることの確認が必要である。

 

市販のPCDにBIまたはCIを設置したものを日常の出荷判定(払い出し基準)に使用する場合は、マスター製品と同等以上の滅菌抵抗性を持ったPCDを使用する必要があります。

つまり、普段滅菌している滅菌物よりも滅菌抵抗性が低いPCDは、日常の払い出し基準には使用できないということでもあります。

PCDの比較

6-2. BIやCIを器材内部に入れることはできない

なぜPCDを使用する必要があるのでしょうか?

ラパロ鉗子などの内腔器材は、外側よりの内側の方が蒸気が浸透しづらく、滅菌が困難です。一方で、BIやCIなどのインジケータは、それが置かれた場所の情報しか得ることができません。つまり、器材内部までの滅菌条件を確認するためには、本来はインジケータを器材内部に入れなくてはいけません。

しかし、物理的にBIやCIを器材内部に挿入することはできません。そのため、器材内部のように滅菌がしづらい環境を疑似的に再現するPCDが必要となるわけです。

PCD(Process Challenge Device)とは?

 

6-3. ワーストケースの考え方で出荷判定をする

PCDを出荷判定に使用する考え方の前提には、すべての器材の滅菌可否を確認することはできないという事実があります。滅菌したすべての器材を確認する時間もありませんし、そもそも包装材を開封してしまった時点で、その器材の無菌性は破綻してしまいます。

そこで、滅菌器のもっとも滅菌しづらい場所(コールドスポット)で、マスター製品よりも滅菌しづらいPCDに挿入したインジケータが合格していれば、全ての器材は滅菌できていると推定します。これが、PCDを出荷判定に使用するワーストケースの考え方です。

ワーストケースとは

 

6-4. PCDにはポーラス型とホローロード型がある

PCDには、積層構造で滅菌抵抗性を持たせるポーラス型と、内腔構造で滅菌抵抗性を持たせるホローロード型があります。

 

ポーラス型とホローロード型

 

『医療現場における滅菌保証のガイドライン2021』(P19)において、市販のPCDとしてポーラス型やホローロード型があり、それらを日常の出荷可否判定に使用する場合は、いずれも事前に十分な検証を行う必要があると述べられています。

では、どちらのPCDを使用するべきなのでしょうか?

 

6-5. 内腔器材の滅菌保証にはホローロード型を選択する

ラパロ鉗子や気腹チューブなど、内腔器材を滅菌するのであれば、ホローロード型のPCDを選択するべきです。その理由はシンプルで、ホローロード型のPCDは、内腔器材よりも滅菌抵抗性が高いからです。

下記は、SALWAY(株式会社名優)が行った自社試験の結果です。SALWAYのコンパクトPCD(ホローロード型)と米国規格AAMIのテストパック原法(ポーラス型)、そして気腹チューブやラパロ鉗子を模した内腔器材の滅菌抵抗性を比較しました。

真空パルスの回数と真空引きの深さを調整し、あえて滅菌条件を悪くした時に、各PCDや器材に挿入したインジケータが不合格を示すかを検証しました。

管腔器材の滅菌保証にはホローロード型を選択する

 

この比較試験の結果、SALWAYのホローロード型のコンパクトPCDは、ラパロ鉗子や気腹チューブよりも滅菌抵抗性が高いことが確認されました。

つまり、これらの内腔器材を滅菌しているのであれば、その器材よりも滅菌抵抗性の高いホローロード型のPCDを、日常の出荷判定に使用する必要があるということです。

 

6-6. SALWAYのコンパクトPCDは器材内部レベルでの滅菌条件達成を確認する

コンパクト PCD

SALWAYのコンパクトPCDは、EN ISO11140-6 Hollow load PCDに適合した、複雑な器材内部レベルでの滅菌条件達成を確認できるPCDです。PCDの内部構造はとても複雑で、ラパロ鉗子などの内腔器材よりも滅菌抵抗性が高く設計されています。

SALWAY コンパクトPCD

 

コンパクトPCDの内部構造

コンパクトPCDの内部構造

 

6-7. コンパクトPCDを使用することで、高いレベルの滅菌保証を低コストで実現可能

SALWAYのコンパクトPCDは、1回あたり定価180円で器材内部までの蒸気浸透を確認することが可能です。滅菌器を回すごとに使用するPCDおよびインジケータの消耗品費は、決して小さくないコストです。

SALWAYのコンパクトPCDを使用することで、大幅にコストを抑えながら、高いレベルの滅菌保証を実現することができます。

コストシミュレーション

 

7. よくあるご質問への回答

7-1. 洗浄インジケータの結果が不合格の場合、何から着手したらよいか?

洗浄効果は、①機械作用 ②温度 ③時間 ④化学作用の4つの条件により変化します。
以下のような要因を検証してみてください。

・スプレーアームは回転していたか
・スプレーノズルに目詰まりはないか
・洗浄する器材を過積載していないか
・適切な洗浄プログラムであったか
・洗浄工程中の温度は適切であったか
・洗剤は適切な量が供給されたか
・洗剤の使用期限などの品質に問題はないか
・水質に変化はないか

 

7-2. SALWAYボウィー・ディックテストのメリット、導入事例を教えてほしい。

SALWAYのボウィー・ディックテストへの切り替えにより、定価ベースで年間約50万円のコストを削減しながら、現行品よりも厳格な(コットンテストパック4kg→7kg適合)ボウィー・ディックテストを実現した事例があります。

SALWAYボウィー・ディックテストのメリット、導入事例

SALWAY ボウィー・ディックテスト

 

7-3. SALWAYタイプ5CIのメリット、導入事例を教えてほしい。

SALWAYのタイプ5CIへの切り替えにより、納入価ベースで年間約35万円のコストを削減しながら、包装内CIの精度向上(タイプ4→タイプ5適合)を実現した事例があります。

SALWAYタイプ5CIのメリット、導入事例

SALWAY 高圧蒸気滅菌用タイプ5CI

 

7-4. タオルを用いた手作りのボウィー・ディックテストやPCDから、既製品へ切り替える意味は何か?

タオルの場合、作業者によってPCD自体の品質にばらつきが生じます。確実な滅菌保証のため、国際規格に適合した既製品のボウィー・ディックテストやPCDを使用することをお勧めします。

タオルを用いた手作りのボウィー・ディックテストやPCD

SALWAY ボウィー・ディックテスト
SALWAY コンパクトPCD

 

7-5. プリオンサイクル(134℃18分)の滅菌保証はどうしたらよいか?

プリオンは病原菌ではなくタンパク質のため、プリオン専用のCI(化学的インジケータ)を使用する必要があります。BI(生物学的インジケータ)は指標菌(Geobacillus stearothermophilus ATCC 7953)の死滅を確認するものであり、プリオンタンパクの不活性化はモニタリングすることはできません。

プリオンサイクル(134℃ 18分)の滅菌保証

prion-cycle-indicator

SALWAY プリオンサイクル用インジケータ

 

 

いかがでしたでしょうか。

本記事の内容に関するお問合せやご相談は、営業担当またはSALWAYウェブサイトのお問合せフォームよりご連絡下さい。

 

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