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コラム

【2024年7月版】滅菌技士(滅菌技師)とは?取得方法や合格率など、実際の滅菌技師がわかりやすく解説します。

滅菌技士(滅菌技師)

滅菌業務に関わる方であれば、「滅菌技士(滅菌技師)」というワードを一度は耳にしたことがあると思います。

 

「滅菌技士(滅菌技師)ってどんな資格?」
「どうやったら取得できるの?」
「取得するメリットは?」
「第1種と第2種は何が違うの?」
「資格を更新するにはどうすればいいの?」

 

こんな疑問を持つ方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

ここでは、滅菌技士(滅菌技師)という資格の概要や取得するための方法を、実際の滅菌技師がわかりやすく解説します。

 

この記事を読めば、滅菌技士(滅菌技師)の概要と、資格取得のために何をすべきかを理解することができます。

 

更新日:2024年7月18日
公開日:2023年6月29日

目次

1. 滅菌技士(滅菌技師)とは

1-1. 日本医療機器学会が認定する資格

滅菌技士(滅菌技師)とは「医療施設に関連した滅菌供給の知識と実践に優れた技士を養成すること」を目的として、一般社団法人日本医療機器学会が認定している資格です。

 

1-2. 認定制度は2000年に発足

滅菌業務を日常的に行っているのは、何ら特別な資格を持たずに、滅菌現場での長年の経験によって滅菌技術を修得した医療職員であることがほとんどでした。これらの職員は、縁の下の力持ちとして資格のないままに定年退職を迎えてきました。

このような現状を鑑みて、現場からの強い要望もあり、日本医療機器学会が2000年に第2種滅菌技士の認定制度を発足させました。その後、2003年に第1種滅菌技師の認定制度が開始されています。

 

1-3. 認定者の多くは看護師や滅菌受託業者、滅菌関連メーカーなど

滅菌技士(滅菌技師)の認定者の多くは、中央材料室で勤務している看護師や医療職員、滅菌業務を受託している滅菌受託業者の職員です。また、滅菌業務に関連する滅菌器や各種製品のメーカーの方々も取得しています。SALWAYの再生処理アドバイザーも滅菌技士(滅菌技師)を取得しています。

 

1-4. 最近では歯科衛生士の受験も増えている

歯科クリニックにおけるハンドピース機器の使いまわし問題が大きく報道されたこともあり、安全な滅菌業務に注力する歯科クリニックも増えてきています。その影響もあってか、近年では歯科に勤める歯科衛生士が滅菌技士(滅菌技師)を受験・取得するケースも増えてきているようです。

 

1-5. 滅菌技士(滅菌技師)は国家資格ではない

滅菌技士(滅菌技師)は日本医療機器学会が認定する資格であり、医師や看護師のような国家資格ではありません。 しかし滅菌業務は、手術や診療に使用される器材の安全性を保障する、患者の命に関わる極めて重要な業務と言えます。SALWAYというブランド設立の背景には、この滅菌業務の重要性を一人でも多くの方に伝え拡げたいという強い想いがあります。

 

1-6. 第1種、第2種の2種類がある

滅菌技士(滅菌技師)には、第1種滅菌技師と第2種滅菌技士の2種類あります。第1種は、第2種の上位資格にあたります。つまり、第2種を取得していないと、第1種を受験・取得することはできません。詳しくは、次章以降で解説します。

 

1-7. 取得するメリットは滅菌業務に関する知識の定着&深耕

滅菌技士(滅菌技師)を取得するためには、医療器材の滅菌業務(再生処理)について網羅的に学習する必要があります。滅菌技士(滅菌技師)の取得に向け学習することで、滅菌業務の知識を深めることができます。

また、普段行っている業務の意味合いを深く理解することが出来たり、逆に改善すべきポイントが見えてくるというメリットもあります。滅菌業務について体系的に勉強しているという、客観的な指標になるのが滅菌技士(滅菌技師)と言えます。

 

1-8. 滅菌技士(滅菌技師)の会員ページ(日本医療機器学会会員)とログイン方法

滅菌技士(滅菌技師)を取得し、日本医療機器学会の会員になると、専用の会員ページへログインすることができます。こちらのホームページでは、所定単位の取得状況などを閲覧することができます。

ログインIDやパスワードは、第2種滅菌技士を取得した際に学会より通知されます。

専用ホームページのログインはこちら

 

1-9. 滅菌技士(滅菌技師)と滅菌管理士は違う

滅菌技士(滅菌技師)に似た資格に、滅菌管理士があります。滅菌管理士は、滅菌サービスの提供を行う滅菌受託業者向けの資格です。日本滅菌業協会が認定しています。

滅菌管理士について詳しく知りたい方は、こちら

 

2. 第2種滅菌技士とは

2-1. 第2種滅菌技士の定義

第2種滅菌技士は医療現場における滅菌供給に関わる業務等の従事者として必要な基本的な知識を習得していると認めた者と、日本医療機器学会により定義されています。

 

2-2. 認定申請の条件(受験資格)は4つ

第2種の認定を申請するためには、以下4つの条件を満たす必要があります。

第2種滅菌技士になるための4つの必要要件(受験資格)
滅菌供給に関わる業務等の実践に通算3年以上携わっていること
日本医療機器学会が作成した“医療現場における滅菌保証ガイドライン”の内容を理解実行できること
第2種滅菌技士認定講習を修了していること
日本医療機器学会の正会員であること

 

滅菌関連業務に3年以上携わっていて、ガイドラインを理解し、認定講習に合格すれば、第2種滅菌技士を取得することができます。日本医療機器学会の正会員になるのは、第2種滅菌技士受験後でも可能です。

 

2-3. 講習会プログラムは講義の受講+筆記試験

第2種滅菌技士認定講習は、約7時間にわたる講義と30分の筆記試験で構成されます。実際のプログラムは、以下の通りです。こちらのプログラムは、2024年12月14日(土)に実施予定の講習会プログラムです。

時間 講習内容
9:30~ 9:40 開会あいさつ、オリエンテーション
9:40~10:20 総論および滅菌概論
10:20~11:00 洗浄・浄化
11:00~11:10 休憩
11:10~11:50 蒸気滅菌
11:50~12:50 昼食休憩
12:50~13:30 エチレンオキサイドガス滅菌
13:30~14:10 過酸化水素ガスプラズマ滅菌 および 過酸化水素ガス滅菌
14:10~14:40 低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌
14:40~14:50 休憩
14:50~15:20 滅菌インジケータ
15:20~15:40 滅菌包装
15:40~16:10 消毒剤の使い方
16:10~16:30 滅菌業務の外部委託
16:30~16:45 休憩
16:45~17:15 筆記試験

日本医療機器学会

 

2-4. eラーニングでの受講も可能

第2種滅菌技士の認定講習は、eラーニングで受講することも可能です。WEB受講の場合、全科目を受講・修了することで、WEB上で試験を受験できます。

受講科目は任意の順番で受講できますが、科目途中で中断した場合、中断箇所からの自動再生には対応していません。また、受講は期間中であれば、複数回受講することも可能です。

2-5. 2024年度の認定講習会日程

2024年度の第25回第2種滅菌技士認定講習会の日程は、eラーニングは11月14日(木)~28日(木)、会場開催は12月14日(土)です。

申込方法は郵送とWEB経由があり、申込時に受講料を振込んだことがわかる明細書や受領書のコピー(WEBの場合は画像データ)を提出する必要があります。申込期限は、eラーニングは10月30日(水)必着、会場受講は11月30日(土)必着です。

会場受講は定員があり、申込状況を下記の日本医療機器学会のHPで確認することができます。

詳細・参加申込はこちらへ。

日時 場所 会場 定員 申込期限(必着)

2024年12月14日(土)
9:30~17:15

横浜 パシフィコ横浜
会議センター 5F
310名 2024年11月30日(土)

2024年11月14日(木)
~11月28日(木)

WEB受講 eラーニングシステム利用 2024年10月30日(水)

日本医療機器学会

2-6. 受講料など認定にかかる費用

第2種の取得には、受講料など諸費用がかかります。講習会で使用するテキストは指定されており、事前に購入しておく必要があります。

また、日本医療機器学会の正会員でない方は、加えて学会への入会金などもかかります。

カテゴリ 費用項目 金額
第2種滅菌技士 資格取得講習受講料 11,500円
テキスト購入費 4,620円
認定料 21,000円
認定更新料 21,000円
日本医療機器学会 入会金 1,000円
年会費 8,000円

日本医療機器学会

 

2-7. 過去問は公開されていない

第2種滅菌技士の筆記試験は、問題用紙を持ち帰ることは許されておらず、過去問は公開されていません。自身で、テキスト等を使用しながら滅菌業務全般を勉強する必要があります。

 

2-8. 講習会で使用するテキストは「医療現場の滅菌」

へるす出版の「医療現場の滅菌」がテキストに指定されています。こちらは、事前に自身で購入し、受講会場に持ち込む必要があります。

へるす出版

「医療現場の滅菌」の購入はこちらから。

 

2-9. 合格のポイントは講義をきちんと聴くこと

当日の講習会では、各章を担当する講師が重点的に理解すべきポイントを教えてくれます。事前にテキストを読み込んだ上で、当日の講習の内容をきちんと聴く事が合格への近道です。

 

2-10. 第2種の合格率は80~90%程度

第2種滅菌技士の合格率は、公式には発表されていませんが、80~90%程度と言われています。

 

2-11. 認定期間の有効期限は4年間

第2種滅菌技士の認定有効期間は、4年間です。認定を更新するためには、以下2つの条件を満たす必要があります。

・4年間引き続いて医療現場の滅菌供給に関わる業務等に貢献すること
・4年間に所定取得単位30単位以上を取得すること

 

2-12. 認定更新には4年間で所定単位30単位以上が必要

所定の単位は、滅菌業務に関連する学会や研究会への参加および演題発表、論文掲載等で取得することが可能です。具体的な取得可能単位数は、以下の通りです。

学会・研究会 活動 取得単位数
日本医療機器学会大会 参加 8単位
日本医療機器学会大会 滅菌供給関連演題発表 筆頭演者 15単位
共同演者 10単位
日本医療機器学会誌 滅菌供給関連論文掲載 筆頭執筆者 15単位
共同執筆者 10単位
日本医療機器学会 滅菌供給関連研究会等 参加 5単位
筆頭演者 12単位
共同演者 5単位
関連学会誌(日本手術医学会,日本環境感染学会)滅菌供給関連論文掲載 筆頭執筆者 10単位
共同執筆者 5単位
関連学会(日本手術医学会,日本環境感染学会)、滅菌供給関連研究会等 参加 5単位
筆頭演者 10単位
共同演者 5単位
海外滅菌供給関連学会あるいは会議(ISO/TC198を含む) 出席 10単位
海外滅菌供給関連学会あるいは会議 演題発表 筆頭演者 20単位
共同演者 10単位

日本医療機器学会

 

2-13. 参加することで単位が取得できる研究会一覧

日本医療機器学会の関連研究会に指定されていて、参加することで単位が取得できる研究会は以下の通りです。

参加申し込み方法やスケジュール等の詳細は、各研究会の事務局へお問合せください。

地区 研究会 事務局
北海道地区 北海道中材業務研究会 TEL:011-706-5826
(北海道大学 物流管理センター 材料室)
関東地区 首都圏滅菌管理研究会 e-mail:info@shuto-mekkin.org
グローバル医科歯科感染管理研究会 e-mail:n.kashiwai@vega.ocn.ne.jp
信越地区 新潟県中材業務研究会 e-mail:niigatachuzai@gmail.com
東海地区 中部地区中材業務研究会 TEL:06-4254-8990
静岡県中材業務研究会 TEL:053-435-2947
(浜松医科大学医学部附属病院 材料部)
関西地区 北摂セントラルサプライ研究会 TEL:06-6879-5801
(大阪大学医学部附属病院 3階材料部事務室内)
京滋滅菌業務研究会 TEL:075-681-2750
中国・四国地区 広島感染防止及び滅菌業務研究会 TEL:082-257-5536
九州地区 FOSS研鑚会 TEL:093-603-1611
熊本県滅菌業務研究会 TEL:096-373-7118
(熊大中材部)
鹿児島県滅菌業務研究会 TEL:099-275-5695
(鹿児島大学病院 医療器材管理部)
鹿児島滅菌供給を考える会(MSS鹿児島) TEL:0995-47-3100
e-mail:mss.kagoshima.2018@gmail.com
(医療法人健康会 霧島記念病院)

日本医療機器学会

 

2-14. 【2024年度版】単位が取得できるセミナー・講習会

2024年度に開催が予定されている、所定単位が取得可能なセミナーについてはこちらをご確認ください。

取得できる単位数が、開催方法(現地またはWEB)により異なることがあるのでご注意ください。

 

2-15. 約10,000名超が認定されている

2022年時点で、10,000名の超える方が第2種滅菌技士に認定されています。

日本には病院で8,000施設以上、クリニックも含めると100,000施設以上あるため、まだまだ十分な数とは言えません。

 

3. 第1種滅菌技師とは

3-1. 第1種滅菌技師の定義

第1種滅菌技師は医療現場における滅菌供給に関わる業務等に精通し,必要な専門的知識及び技術を習得していると認めた者と、日本医療機器学会により定義されています。第1種は、専門的な知識や技術が求められる、第2種の上位資格となります。

 

3-2. 第1種滅菌技師は厚生労働省も認めた資格

滅菌技師は現時点では国家資格ではありませんが、「滅菌の専門家」として厚生労働省からも認められています。

厚生労働省が通知した「再製造単回使用医療機器に係る医薬品, 医療機器等の品質,有効性及び安全性に関する 法律施行規則等の改正等について」 の中には、こう記載されています。

滅菌に関する専門的知識を有する者とは 一般社団法人日本医療機器学会により 第1種滅菌技師の認定を受けている者 又はそれと同等の能力を有する者とすること

 

3-3. 認定資格条件(受験資格)は第2種滅菌技士であること

第1種滅菌技師を受験するには、第2種滅菌技士に認定されている必要があります。

 

3-4. 認定試験は学科試験+実技講習で構成される

2日間にわたる学科試験(講義の受講と筆記試験)があり、学科試験に合格した方のみ後日開催される実技講習に進みます。

試験スケジュールは例年、おおまかに以下のようになることが多いです。

ある年の第1種滅菌技師の試験スケジュール

時期 内容
12月  学科試験(2日間)パシフィコ横浜
2月 学科試験合格通知
6月 実技講習(2日間)
7~8月 認定証 発送

 

なお、2022年度(第20回)の学科試験は下記のプログラムでした。

学科試験 第1日目
時間 科目
13:00~13:30 挨拶
第1種滅菌技師認定制度について
洗浄・滅菌・消毒に関するトピックス
13:30~14:30 品質マネジメントシステムを基盤としたバリデーション
14:30~15:30 微生物と感染の基本
15:30~15:45 休憩
15:45~16:45 ウォッシャーディスインフェクターのバリデーションと日常管理
16:45~18:05 蒸気滅菌における滅菌バリデーションと日常管理
学科試験 第2日目
時間 科目
9:00~10:10 エチレンオキサイド滅菌における滅菌バリデーションと日常管理
10:10~10:55 過酸化水素ガスプラズマ滅菌における滅菌バリデーションと日常管理
10:55~11:25 過酸化水素ガス滅菌における滅菌バリデーションと日常管理
11:25~12:25 昼食休憩
12:25~13:10 低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌における滅菌バリデーションと日常管理
13:10~14:00 滅菌インジケータの管理
14:00~14:30 滅菌物の保管・供給・リコール
14:30~14:50 休憩
14:50~16:20 筆記試験(選択30問+記述式)

 

実技講習は、実際の滅菌器メーカーのショールーム等で、2日間に渡って開催されます。
開催場所はその年によって異なり、東京近郊の場合もあれば、長野や松山といった地方で行われることもあります。

 

3-5. eラーニングでの受講は不可

第1種については、e-ラーニングでの学科試験は実施されていません。

 

3-6. 2024年度の認定講習会日程

2024年度の第1種滅菌技師認定講習会の学科試験は、12月13日(金)~14日(土)にパシフィコ横浜にて行われます。

第1種滅菌技師認定の試験スケジュールは、第2種滅菌技士であること、つまり日本医療機器学会の会員であることが前提となっているため、会員でない一般の方へは告知されていません。

日本医療機器学会の会員ページから確認することができますので、受験される方は会員ページで最新情報を確認してください。

会員ページのログインはこちら

 

3-7. 受講料など認定にかかる費用

第1種滅菌技師の取得にも、受講料等の費用がかかります。

費用項目 金額
資格取得講習受講料 学科講習 30,000円
実技講習 30,000円
認定料 20,000円

日本医療機器学会

 

3-8. 第2種同様、過去問は公開されていない

第1種滅菌技師についても、問題用紙を持ち帰ることは許されておらず、過去問は公開されていません。

 

3-9. 講習会で使用するテキストは申込み後に送られてくる

講習会で使用するテキストは、第1種滅菌技師の認定申込が完了すると送られてきます。

第1種滅菌技師認定学科講習会テキスト

 

また、講習会当日には、講習で使用されるスライドがまとめられたスライドレジメも配布されます。

第1種滅菌技師認定学科講習会スライドレジメ

 

3-10. 第1種の学科試験の合格率は10%前後

合格率は公式には発表されていませんが、2022年10月に実施された第20回の学科講習会(筆記試験)の合格率は、10%前後であったと言われています。第2種と比べて難易度が非常に高いことがわかります。

 

3-11. 第1種の認定は、第2種を更新することによって更新される

第1種滅菌技師の制度規則には、「第2種滅菌技士認定資格を更新することにより更新され,改めて第1種滅菌技師認定更新手続きは必要としない」と記載されています。

つまり「2-12.認定更新には4年間で所定単位30単位以上が必要」に記載した、第2種滅菌技士の認定更新と同じ条件をクリアする必要があります。

 

3-12. 2021年時点で475名が認定されている

2021年に実施された第19回の認定時点で、475名の方が第1種滅菌技師に認定されていると言われています。

 

 

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