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再生処理の知識

【画像あり】ガス滅菌とは?選び方、安全性、メリット/デメリット等をわかり易く解説します。

STERRAD

『ガス滅菌』と聞くと、

 

「オートクレーブとの違いがよくわからない」

「種類がたくさんあってどれを選べばいいかわからない」

「ガスってなんだか危なそう」

 

と思われる方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、ガス滅菌の種類やそれぞれの特徴など、ガス滅菌に関する簡単な疑問にお答えしていきます。

 

この記事を読めば、ガス滅菌についての基礎知識を得ることができます。

 

更新日:2024年7月25日
公開日:2023年6月29日

目次

0. そもそも滅菌とは何か

0-1. 滅菌とはあらゆる微生物を死滅させること

手術の様子

外来診療や手術で使用される器材の中には、再使用可能な医療機器(RMD:reusable medical device)が多く存在します。使用済のRMDは汚染されており、次の患者に使用しても問題のないよう滅菌する必要があります。滅菌とは、あらゆる微生物を完全に殺滅・除去すること、つまり無菌状態にすることです。

 

0-2. すべての器材が滅菌できているかを確認することはできない

高圧蒸気滅菌器

中央材料室では、一回の滅菌でたくさんのRMDを滅菌します。しかし、すべての医療器材が滅菌できているかを全品検査することはできません。全ての器材を検査する時間もありませんし、そもそも滅菌バッグなどを開封した瞬間に無菌ではなくなってしまいます。

では、どのように全ての器材の滅菌を確認するのか?

 

0-3. 「微生物が存在する確率が100万分の1以下」の状態を無菌状態とする

完全な滅菌の保証は不可能なので、滅菌の許容基準を決定するために多くの機関が協議をしてきました。そして、「滅菌した医療器材に微生物が生存する確率が1/100万であれば滅菌出来たとみなす」と定義されました。これを、SAL (sterility assurance level)≦10⁻⁶と表し、「無菌性保証水準」と呼びます。

CEN(欧州標準化委員会)やISO(国際標準化機構)でも、この状態をもってRMDが滅菌されたとみなしてよいレベルとしています。

SAL≦10⁻⁶

 

1. 医療器材の滅菌方法

1-1. 医療器材の滅菌は大きく高温滅菌と低温滅菌に分類される

医療機関における滅菌

医療技術の進歩に伴い、医療器材の種類は増え続けています。その中には、各種金属やプラスチック、ガラス、電子部品など、高温に耐えられない部品を使用した器材も存在します。滅菌方法を選ぶ際の基本的な考え方として、高温に耐えられる器材は高温滅菌、耐えられない器材は低温滅菌で滅菌します。

 

1-2. 高温滅菌である高圧蒸気滅菌は医療機関における第一選択

高温滅菌である高圧蒸気滅菌には、滅菌方法として以下のような特徴があります。これらの特徴から、高圧蒸気滅菌は医療機関での医療器材を滅菌するのにも最も安全かつ一般的な方法であるとされています。

・滅菌剤である飽和蒸気を簡単に得ることができる
・毒性がない
・熱伝導率が高く短時間で微生物を殺滅できる
・滅菌工程の管理とバリデーションが行える

 

1-3. 高温に耐えられない器材は低温滅菌(ガス滅菌)で滅菌する

一方で、高圧蒸気滅菌の高温(約120℃以上)に耐えられない器材は、高圧蒸気滅菌より低温で行えるガス滅菌で滅菌します。高温に耐えられない器材を高圧蒸気滅菌で滅菌すると、器材が破損し使用できなくなってしまいます。

 

1-4. ガス滅菌には4つの方法がある

医療機関で実施されているガス滅菌には、以下の4種類があります。

・EOG滅菌
・過酸化水素ガスプラズマ滅菌
・過酸化水素ガス滅菌
・LTSF滅菌

次章からは、それぞれのガス滅菌の概要について述べていきます。

 

2. EOG滅菌

EOG滅菌器

ウドノ医機

2-1. 40~55℃の酸化エチレンガスで菌を死滅させる

酸化エチレンガス(EOG)は、微生物を死滅させるのにきわめて効果的であることが立証されており、ガスと微生物間の化学反応により、微生物を殺滅します。この反応には湿気(水分)が必要であり、湿気が存在することにより菌体を膨潤させ、水と親和性がよいEOが菌体内に浸透しやすくなることから、滅菌効果が上がるとされています。

滅菌工程は、まずガスの微生物不活化効果を確実に高める環境を整えるプレコンディショニングから始まります。プレコンディショニングは空気除去工程と加湿工程からなり、その後、EOGを注入する滅菌工程、ガス除去、エアレーションへと進みます。EOG滅菌における滅菌条件は、以下の通りです。

【滅菌条件】
・EO濃度600mg/l超
・40~55℃;相対湿度30~70%
・1~4時間の滞留(滅菌)時間

EOG滅菌工程

 

2-2. 残留毒性があるため8時間~数週間のエアレーションが必要

EOG滅菌の特徴の一つに、エアレーションが長いことが挙げられます。プラスチックやゴムといった素材は、滅菌中にガスを吸着します。滅菌後、こうした残留ガスは近くのものに移るため、患者に用いると有毒ガスが患者の組織を傷害する恐れがあります。

そのため、滅菌物からは必ず残留ガスを除去しなければなりません。この工程をエアレーションと言います。エアレーションは、滅菌済み器材を長時間大気に放置するか、エアレーターを使用して残留ガスを強制排出をするかのいずれかで実施します。現在では、滅菌器にエアレーション機能が付属していることが一般的です。

エアレーションに必要な時間は、滅菌物の素材やエアレーション方法によって異なります。ここでは、米国国防総省MIL規格を紹介します。EOが残留しやすいPVC(ポリ塩化ビニル)製品の場合、24時間のエアレーションでも数ppmの残留を認めると言われています。

材料の分類 室内放置 エアレーター
24時間 8時間
ゴム 96時間 8時間
金属器具(包装) 24時間 8時間
ポリエチレン 48時間 8時間
ポリ塩化ビニル 7日 12時間
ポリ塩化ビニルと金属からなる物 7日 12時間
ゴムと金属からできている物 96時間 8時間

 

2-3. 他の滅菌方法が使えない、熱に弱い素材が対象

EOG滅菌するものは、高圧蒸気滅菌の温度(約120℃以上)や圧力に耐えられない素材が対象となります。軟性内視鏡や硬性鏡、膀胱鏡、気管支鏡、消化器内視鏡、非耐熱性の手術機器、プラスチック類、チューブ類などです。

 

2-4. EOGは医療機関では実施されなくなってきている

毒性が極めて強く作業者保護が必要であること、長時間のエアレーションが必要であるといった理由から、多くの国ではEOG滅菌は医療施設内でなかなか用いられなくなっており、専門業者が行うことが一般的になっています。

 

3. 過酸化水素ガスプラズマ滅菌

Strread 100NX

ASP Japan

3-1. 過酸化水素ガスプラズマで発生したフリーラジカルで菌を死滅させる

過酸化水素ガスプラズマ滅菌は、プラズマ化した過酸化水素で微生物を不活化させます。プラズマは、個体、液体、気体に続く、物質の「第4形態」と言われています。

プラズマ状態で発生する自由電子や自由イオンは、化学的に極めて活性が高く、フリーラジカルと呼ばれます。これらのフリーラジカルが、微生物の細胞壁を破壊し、細胞を不活性化します。

物質の形態

 

過酸化水素ガスプラズマ滅菌では、以下の工程を繰り返し実施します。数分間、深い真空中で過酸化水素低温ガスを発生させて、約400Wの高周波エネルギーによりガスをプラズマ化、その後ガスは水と酸素に分解されます。滅菌温度は50℃前後です。

過酸化水素ガスプラズマ滅菌工程

【滅菌工程】
A:蒸気発生器に過酸化水素を注入
B:真空引きにより気化
C:チャンバー内真空引き
D:チャンバー内に過酸化水素を注入
E:拡散
F:プラズマ発生のため真空引き
H:空気供給

 

3-2. 残留毒性がないためサイクル時間は短い

過酸化水素ガスプラズマ滅菌の大きな特徴の1つとして、残留毒性がないことが挙げられます。滅菌剤として使用された過酸化水素は、滅菌完了時には水と酸素に分解されます。そのため、エアレーションが不要であり、滅菌工程終了後は滅菌物をただちに使用することが可能です。

エアレーション工程がないことから、サイクル時間は最短で24分の物もあります(機種やプログラムによって異なります)。

 

3-3. 蒸気滅菌に必要な温度や圧力に耐えられない材質が対象

過酸化水素ガスプラズマ滅菌の対象となるのは、蒸気滅菌に必要な温度(121℃以上)や圧力に耐えられない材質のものです。硬性鏡、プローブ、カメラ、電源、バッテリー類など、広範囲の医療器材を滅菌することが可能です。

しかし、紙、綿布、ガーゼなどセルロース系の材質を含む滅菌物は、過酸化水素の吸着が大きく滅菌に悪影響を与える可能性があるため、過酸化水素ガスプラズマ滅菌には適していません。

 

3-4. リネン、綿布、紙の包装材は使えない

滅菌包装材においても、紙や綿布、ガーゼなどの素材の物は使用できません。過酸化水素ガスプラズマ滅菌用の、タイベックやポリプロピレン製の包装材を使用しましょう。

過酸化水素ガスプラズマ滅菌用滅菌バッグ

ASP Japan

 

4. 過酸化水素ガス滅菌

過酸化水素ガス滅菌器

Canon

 

4-1. 減圧沸騰によりガス化させた過酸化水素で菌を死滅させる

過酸化水素ガス滅菌は、減圧沸騰によりガス化させた過酸化水素で、微生物を殺滅します。滅菌剤として、59wt%(オキシドールの約20倍の濃度)の過酸化水素を使用します。減圧沸騰とは、真空下に液体を置くと直ちにガス化(蒸気化)する現象です。過酸化水素の大気圧下における沸点は約120℃で、常温や低温滅菌の温度域(40~60℃)においては液体です。

しかし、液体の状態では滅菌物の凹凸部や内腔形状部への浸透性が悪く、容器や包装に収まった器材を滅菌するのは困難です。過酸化水素ガス滅菌では、減圧沸騰の原理を用いてこの問題を克服しています。

 

4-2. ルーメン、ノンルーメンサイクルがある

内腔構造や複雑な形状の器材への滅菌剤の浸透性に重きを置いたルーメンサイクルや、表面構造の器材向けのノンルーメンサイクルがあります。真空到達圧や時間に差はありますが、動作の概念に大きな違いはありません。

サイクル 時間 対応器
ルーメンサイクル(ノーマルサイクル) 50分(標準) 内腔および非内腔
ノンルーメンサイクル(ショートサイクル) 28分(標準) 非内腔

 

4-3. 蒸気滅菌に必要な温度に耐えられない材質が対象

過酸化水素ガスプラズマ滅菌同様、蒸気滅菌に必要な温度や圧力に耐えられない材質の器材が過酸化水素ガス滅菌の対象になります。

また、紙、綿布、ガーゼなどセルロース系の材質を含む滅菌物は、過酸化水素の吸着が大きく滅菌に悪影響を与える可能性があるため、過酸化水素ガス滅菌には適していません。

 

4-4. リネン、綿布、紙の包装材は使えない

滅菌包装材においても、紙や綿布、ガーゼなどの素材の物は使用できません。過酸化水素ガス滅菌用の、タイベックやポリプロピレン製の包装材を使用しましょう。過酸化水素ガス滅菌用滅菌バッグ

Canon

 

5. LTSF滅菌

 

LTSF滅菌器

ウドノ医機

 

5-1. ホルムアルデヒド蒸気で菌を死滅させる

低温飽和蒸気とホルムアルデヒドの混合気体を滅菌剤として、蒸気の浸透性とホルムアルデヒドの殺菌力の相乗効果を利用し、アルキル化により細菌芽胞を殺滅します。ホルムアルデヒド単体では、水分の極端に少ない芽胞形成菌の細胞壁へ浸透することができませんが、低温蒸気が芽胞形成菌の細胞壁である芽胞殻を湿潤させ細胞壁への浸透を促します。

工程が比較的低温(50~75℃)であるため、熱に弱く従来の蒸気滅菌に適さない素材にも使用することが可能です。

LTSF滅菌工程

 

5-2. スチームウォッシュ工程があるためが、サイクル時間は比較的長い

LTSF滅菌の全工程中、もっとも時間を要するのがスチームウォッシュ(gas removal)工程です。装置から排出されたホルムアルデヒドは、滅菌工程後に蒸気を用いて洗い流されます。この工程に約90分かかる場合もあります(機種により時間は異なります)。

このスチームウォッシュ工程でチャンバー内は無毒化されるため、滅菌直後に追加のエアレーションなしで滅菌物を使用できます。そのため、LTSF滅菌は特定化学物質障害予防規則の一部要求事項が除外されています。

EOG滅菌と比較すれば、サイクル時間は比較的短いと言えますし、最近では約2時間サイクルのハイスピードモデルも出てきています。

 

5-3. 滅菌適応範囲はEOG滅菌とほぼ同じ

LTSF滅菌の滅菌適応範囲は、EOG滅菌とほぼ同じと言われています。軟性内視鏡や硬性鏡、膀胱鏡、気管支鏡、消化器内視鏡、非耐熱性の手術機器、プラスチック類、チューブ類などです。

軟性ビデオスコープやビデオ硬性腹腔鏡などの消化器内視鏡の滅菌には、55℃もしくは60℃が用いられます。

 

5-4. 米国では実施されていない

LTSFの効果については、国ごと、または専門家ごとに見解が分かれています。英国、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーなどでは、LTSFが日常的に用いられ、LTSF滅菌器に関する国内規制があります。

一方、オランダなどいくつかの国では、ホルムアルデヒドは滅菌剤として推奨されておらず、米国ではこの滅菌法自体ほとんど知られていません。

LTSF滅菌が日本で認証を取得したのは2011年であり、EOG滅菌、過酸化水素を使用した滅菌の後に運用が開始されたことから、第3番目の低温滅菌として位置付けられています。

 

6. ガス滅菌の温度と時間

6-1. 各ガス滅菌の温度と時間のまとめ

これまでに記してきた、各ガス滅菌の温度やサイクル時間をまとめました。

滅菌法 温度 滅菌時間 サイクル時間
高温滅菌 高圧蒸気滅菌 121~135℃ 3~20分 45~60分
低温滅菌 EOG滅菌 40~55℃ 1~4時間 数時間+エアレーション
(8時間~数週間)
過酸化水素ガスプラズマ滅菌 45~55℃ 数分 24~75分
過酸化水素ガス滅菌
LTSF滅菌 50~75℃ 40~180分 数時間

 

6-2. LTSF滅菌はガス滅菌の中でも比較的滅菌温度が高い

低温滅菌である各ガス滅菌の中にも、温度の幅が存在します。LTSF滅菌は、55~75℃とガス滅菌の中では比較的高い温度で実施します。

 

6-3. EOG滅菌はエアレーションが必要なためサイクル時間が長い

EOG滅菌は、滅菌工程後に追加のエアレーションが必要となるため、滅菌を開始してから器材が使用可能になるまでのサイクル時間が他のガス滅菌と比較して長い方法です。

 

7. ガス滅菌の安全性

7-1. 各ガス滅菌の安全性のまとめ

これまでに記してきた各ガス滅菌の安全性についてまとめました。

滅菌法 滅菌剤の毒性 作業環境や環境保全に関する規制
EOG滅菌 滅菌剤の毒性が極めて高い。滅菌物に残留するおそれがある。 特定化学物質障害予防規則によってその取扱いが規制される。
過酸化水素ガスプラズマ滅菌 なし なし
過酸化水素ガス滅菌
LTSF滅菌 滅菌剤に毒性がある。スチームウォッシュ工程でほぼ無毒化される。 特定化学物質障害予防規則の一部要求事項が除外されている。

 

7-2. EOは毒性が強く、発がん性も疑われている

EOG滅菌に使用されるEO(エチレンオキシド)の人体に対する毒性は非常に強く、吸入や曝露により様々な障害を引き起こすと報告されています。頭痛、吐き気、呼吸困難、チアノーゼ、肺浮腫などの急性障害や、強い疲労感、筋力低下といった慢性障害です。

またEOは、ヒトに対して発がん性の疑いのある物質であり、以下のような報告を受けています。

団体 報告内容
日本産業衛生学会 第1群(ヒトに対して発がん性のある物質)
ACGIH(米国産業衛生専門家会議) A2(ヒトに対して発がん性が疑われる物質)
IARC(国際がん研究機関) グループ1(ヒトに対して発がん性のある物質)
EU カテゴリー2(ヒトに対して発がん性を示すとみなすべき物質)

 

7-3. EOG滅菌の実施に際して、作業環境や環境保全関連の規制を守る必要がある

EO(エチレンオキシド)は毒性も強く、また発がん性も疑われていることから、日本では特定化学物質障害予防規則(特化則)によって、その取扱いが規制されています。

主な規制の内容は、下記の通りです。

規制 詳細
作業主任者の選任
作業環境の測定 半年以内に1回、EOを取り扱う作業環境のガス濃度を測定し、その結果を30年間保存しなければならない。管理濃度は1ppm以下である。
作業者の健康診断 半年以内に1回、普通健康診断を受診し、健康診断の記録は5年間保存しなければならない。
作業記録 作業記録を作成し、結果を30年間保存しなければならない。
防毒マスクの着用 ボンベ交換時や滅菌器内へ入る場合は、防毒マスクを着用しなければならない。
換気 EOを使用する場所には、換気扇などを取り付けて換気を行い、作業環境の濃度を極力低く保つ。
その他の作業環境対策 使用場所には、ガス検知器(EO検知器)なども備えておき、定期的に作業環境のチェックを行う。
漏洩検知警報器(ガスモニター)を設置することが望ましい。
滅菌済み品を補完する部屋などの換気にも十分に気を付ける。
EO滅菌器からのガス漏れがないよう定期的に保守を行う。

 

8. ガス滅菌の対象物

8-1. ガス滅菌とオートクレーブの違い

ガス滅菌とオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)の大きな違いは、滅菌工程中の温度と圧力です。ガス滅菌の滅菌工程は低温かつ低圧なのに対し、オートクレーブは高温かつ高圧です。下の図はオートクレーブの場合の温度と圧力の変化を表したものです。

高圧蒸気滅菌温度

 

8-2. ガス滅菌の対象はオートクレーブの温度や圧力に耐えられないもの

基本的な考え方としては、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)の温度や圧力に耐えられない材質がガス滅菌の対象となります。具体的には、各種金属やプラスチック、ガラス、電子部品などです。

ガス滅菌の中で具体的にどの滅菌法を適応すべきかは、添付文書や取扱説明書を参照して、滅菌したい器材を製造しているメーカーの指示に従うのが原則です。

滅菌法 対象物 滅菌できないもの
高圧蒸気滅菌 金属(鉗子、鍼など)、繊維(ガーゼ、リネン類、セルロース)、
ガラス、ゴム、水溶液、培地
光学機器(硬性鏡など)、無水油脂、パラフィン、粉末、
熱や水に弱い物
EOG滅菌 プラスチック、ゴム、硬性鏡、熱に弱い素材 液体、ガスが浸透しづらい物
過酸化水素ガスプラズマ滅菌 プラスチック、光学機器(硬性鏡など) 繊維(ガーゼ、リネン類、セルロース)、液体、粉末、過酸化水素を吸着する素材、ガスが浸透しづらい物
過酸化水素ガス滅菌
LTSF滅菌 プラスチック、ゴム、硬性鏡、熱に弱い素材 繊維(ガーゼ、リネン類、セルロース)、液体、粉末、油脂、ガスが浸透しづらい物

 

9. ガス滅菌方法の選び方

9-1. 滅菌方法の選択は添付文書や取扱説明書を参考にする

器材の添付文書や取扱説明書(IFU:instructions for use)には、使用方法や保管方法、注意事項などが掲載されています。この中に、器材の適切な洗浄および滅菌方法が記載されている項目があります。不明点がある場合は、直接メーカーに問合せをすることも必要です。

 

9-2. 歯科ではクラスBオートクレーブが主流

歯科クリニックにおいては小型のオートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)が使用されることが一般的です。小型滅菌器には、3つのクラス分類があります。滅菌する器材に合わせて、小型滅菌器のクラスを選ぶ必要があります。

歯科治療に使用されるハンドピースは、内腔を有する複雑な構造であるため、ハンドピースの滅菌には管腔器材の滅菌に対応したクラスBの小型滅菌器を選択する必要があります。

クラス 用途
B 非管腔、管腔、ポーラス器材すべて。包装の有無は問わない。
S 未包装の非管腔器材および製造元が指定する、ポーラス型、小型のポーラス型、ホローA器材、一重ないし多重包装のうち最低でも1つを含む特定の器材。
N 未包装の非管腔器材のみ。

 

クラスBオートクレーブ

滅菌器メーカー「MORITA」のオートクレーブ

 

10. 【一覧表】ガス滅菌の種類の総まとめ

ここまでの各滅菌法の内容を、メリット・デメリットを含めてまとめました。

滅菌法 高温滅菌 低温滅菌
高圧蒸気滅菌 EOG滅菌 過酸化水素ガスプラズマ滅菌
過酸化水素ガス滅菌
LTSF滅菌
温度 121~135℃ 40~55℃ 45~55℃ 50~75℃
滅菌時間 3~20分 1~4時間 数分 40~180分
サイクル時間 45~60分 数時間+エアレーション
(8時間~数週間)
24~75分 数時間
対象物 金属(鉗子、鍼など)、繊維(ガーゼ、リネン類、セルロース)、ガラス、ゴム、水溶液、培地 プラスチック、ゴム、硬性鏡、熱に弱い素材 プラスチック、光学機器(硬性鏡など) プラスチック、ゴム、硬性鏡、熱に弱い素材
滅菌出来ないもの 光学機器(硬性鏡など)、無水油脂、パラフィン、粉末、熱や水に弱い物 液体、ガスが浸透しづらい物 繊維(ガーゼ、リネン類、セルロース)、液体、粉末、過酸化水素を吸着する素材、ガスが浸透しづらい物 繊維(ガーゼ、リネン類、セルロース)、液体、粉末、油脂、ガスが浸透しづらい物
メリット 毒性が無く安全。比較的短時間。対象となる医療機器が多い。工程管理・バリデーションを適正に行える。 低温で滅菌できる。 低温で滅菌できる。比較的短時間。エアレーションが不要。 低温で滅菌できる。エアレーションに時間がかからない。
デメリット 熱、高圧、水に弱い物は滅菌出来ない。 毒性が極めて高く、滅菌物に残留する可能性がある。エアレーションに時間がかかる。作業員保護の必要性がある。 設備費が高額。過酸化水素を吸着する素材やガスが浸透しづらい器材は滅菌出来ない。 毒性がある。ガスが浸透しづらい器材は滅菌出来ない。

 

 

11. ガス滅菌での包装

11-1. 包装材はそれぞれの滅菌方法に適合した製品を選択する

医療器材はその使用直前まで無菌性が維持される必要があるため、滅菌バッグやコンテナなどに包装してから滅菌を行います。

滅菌バッグやコンテナなどの包装材は、各ガス滅菌の滅菌剤の特性を理解した上で、それぞれの滅菌法に対応したものを選択する必要があります。

 

11-2. 過酸化水素ガス系の滅菌はリネンや紙が使えないので注意

過酸化水素ガスプラズマ滅菌および過酸化水素ガス滅菌においては、リネンや紙素材の包装材は使用できません。これは、滅菌剤である過酸化水素が紙や綿布、ガーゼなどに吸着するためです。

過酸化水素ガスプラズマ滅菌、過酸化水素ガス滅菌の包装には、タイベックやポリプロピレン製の包装材を使用する必要があります。

 

11-3. LTSF滅菌は綿布製などの多孔性を有する包装材の使用を控える

LTSF滅菌については、タイベックやポリプロピレン製の包装材など専用の包装材料の使用は要求されていません。しかし、綿布製など多孔性を有する包装材料は、ホルムアルデヒドの吸着が高くなるため、使用を控えることが推奨されています。不織布および紙製の包装材を使用しましょう。

 

11-4. コンテナの中にはガス滅菌に使用できないものもあるので注意

滅菌コンテナの中には、高圧蒸気滅菌にのみ対応している製品もあります。高圧蒸気滅菌器専用のコンテナは、ガス滅菌には使用できないので注意が必要です。

高圧蒸気滅菌にもガス滅菌にも使用したい場合は、ユニバーサルデザインのコンテナがお勧めです。高圧蒸気滅菌、過酸化水素ガスプラズマ滅菌、過酸化水素ガス滅菌、EOG滅菌に対応しているものもあります。

コンテナについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

【画像あり】滅菌コンテナとは?フィルターの種類や使用方法、選び方などを解説します。

 

12. ガス滅菌の使用期限

12-1. 使用期限の考え方は、TRSMとERSMの2つある

滅菌物は、保管状況、包装材料、物品の劣化程度などにより、使用できる期限があります。滅菌した器材の使用期限(安全保存期間)の考え方は、TRSM(time related sterility maintenance)とERSM(event related sterility maintenance)の2つがあります。

考え方 概要
TRSM
(time related sterility maintenance)

包装材料による時間軸を基本とした考え方
例:滅菌後6か月まで

ERSM
(event related sterility maintenance)

運搬・保管方法などの事象で管理する考え方
例:滅菌後、衝撃や負荷がかかるまで

 

TRSMは、「滅菌してから半年後までを滅菌有効期限とする」など、時間で期限を設定する方式です。ERSMは、落としたり、脇で抱えたり、特別な衝撃や負荷が与えられない限り、無菌性が維持されているとみなし管理する方式です。現在の欧米の安全保存期間に関する考え方は、従来の包装材料により時間軸を基本としてTRSMから、運搬・保管方法などの事象で管理するERSMに移行しつつあります。

 

12-2. 日本国内の多くの病院はTRSMで設定

日本国内の病院では、安全保存期間をTRSM(時間で期限を決める方式)で設定している病院が大半です。

『医療現場における滅菌保証のガイドライン2021』においては、各施設で滅菌済みのRMDの安全保存期間を設定するよう勧告されています。具体的な保存期間については、無菌バリアシステムメーカーからの情報と各施設での保管条件により設定する、とされています。保管条件は、保管場所の温度や湿度、密封棚か開放棚かの違い、在庫管理の仕方などが含まれます。

 

12-3. 米国の多くはERSMで設定

ERSMは、時間に影響されるのではなく、滅菌器材に対して汚染される可能性のある出来事があったかどうかが重要であり、そのような事実があれば時間に関係なく無菌性は破綻すると考えます。米国では、ERSMが一般的です。

滅菌物の保管状況は施設により異なるため、滅菌物の使用期限は保管技術に関連する問題と捉えるべきと言われています。正しい保管を実施するためには明文化した業務基準と、作業者全員がそれを遂行することが重要です。

 

参考書籍:医療現場の清浄と滅菌(中山書店)

 

 

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