目次
1. Ramadhibodi Chakri Naruebodindra Hospitalの概要
今回見学させていただいたのは、Ramadhibodi Chakri Naruebodindra Hospitalです。バンコク中心部からバスで約1時間程度の距離に位置しています。
Ramadhibodi Chakri Naruebodindra Hospitalは地域の1次・2次医療機関として機能するだけでなく、高度な3次医療を提供する医療機関です。
病床数は400床ほどと中規模ながら、ハイブリッド手術室を設けているだけでなく、ロボット支援手術を行うことで、タイ国全体の臨床活動を支えている病院といえます。
この病院は、医療機関の国際的な第三者評価機構であるJCI(Joint Commission International)の認証を取得している先進的な病院でもあるため、期待に胸が膨らみます。
病院に入ると、歴代のラーマ国王の肖像画が待ち受けていました。
ラーマ9世の肖像画
中央材料室は、手術室の上の5階に位置しており、ゾーニングは厳格な3ゾーンで構成されています。
さらに、日本で一般的な「洗浄→組立→包装→滅菌→保管」のルートだけでなく、洗浄・消毒→保管のルートも明確にゾーン分けされていました。(図の左側)
2. 中央材料室の見学 洗浄 → 消毒ルート
手術で使われないノンクリティカルの器材は、中央材料室入り口の手前側のウォッシャーディスインフェクター(WD)で処理されます。パススルー型の内視鏡洗浄装置も存在し、一方通行で洗浄→消毒のみ専用の保管室へと運搬されます。
内視鏡専用の洗浄装置
内視鏡洗浄装置の洗浄ポート
消毒のみの保管室には乾燥機が設けられており、乾燥後に保管棚へ保管されます。
3台の乾燥機
3. 中央材料室の見学 洗浄 → 組立 → 包装 → 滅菌ルート
3-1. 洗浄エリア
手術で使用された器材は、全て一次洗浄(用手洗浄)を終えてから中央材料室へと搬入されます。したがって、洗浄室のシンクにはブラシが一本も見当たりませんでした。
ブラシのないシンク
超音波洗浄装置を2台保有しており、日常的に洗浄インジケータを用いた日常モニタリングを実施しながら使用されているそうです。
判定後の洗浄インジケータは、記録用紙に貼り付けて保管されます。
2台のゲティンゲ社製超音波洗浄装置
GKE 超音波洗浄工程インジケータの合否基準
GKE 超音波洗浄工程インジケータの記録用紙
緊急用の洗眼器も用意されており、スタッフの安全性にも配慮していることが伺えます。
緊急用の洗眼機
搬入された器材は、その形に応じて2種類のカートに積載され、ウォッシャーディスインフェクターで洗浄されます。
2種類の洗浄カート
ウォッシャーディスインフェクター(組み立て・包装エリア側より撮影)
なお、洗浄器に使用される洗浄剤は、洗剤ルームから供給されるそうです。
洗剤ルームには約180Lの洗剤入りの樽が置かれていました。
(左)アルカリ洗剤 と(右)酵素洗剤
使用した滅菌コンテナはカートウォッシャーで洗浄されたのちに、組立エリアへと運ばれます。
滅菌コンテナ用カートウォッシャー(組み立て・包装エリアより撮影)
3-2. 組み立て・包装エリア
洗浄インジケータの結果判定後、通過した器材は自動昇降テーブルの上で検品・組立・包装されます。
中でも珍しかったのは、硬性鏡用の点検装置です。この装置は、従来目視にしか頼れなかった光学系の点検作業を機械化することにより、目視で8割見逃してしまうエラーを検出することができるそうです。
硬性鏡の点検装置
洗浄インジケータの記録用紙
鋼製小物は開いたまま滅菌できるよう、専用の金具により固定して滅菌しています。
鋼製小物を固定する専用の金具
開いて固定された鋼製小物
セット組が必要な器材はGetinge社のT-docで管理され、スタッフはセット物の内容を写真で確認しながら組み立て作業を進めることができます。
T-Docに表示されたセット組の内容
包装するスタッフ
包装材には、滅菌バッグ・滅菌ラップ・滅菌コンテナのいずれも使用されていました。
それぞれの包装材に、T-Docのラベルが貼付されています。
ラベルの貼付された滅菌バッグ
ラベルの貼付された滅菌コンテナ
3-3. 滅菌エリア
滅菌器は、高圧蒸気滅菌器、LTSF滅菌器、過酸化水素プラズマ滅菌器を使用しています。
滅菌後のラックは自動で左右に動くレールに搬出され、すぐに次回の滅菌ができるようになっています。
滅菌器の自動搬出レール
自動搬出レールが動いている様子
滅菌判定にはBIやCIを使用しており、それぞれの判定基準を明記して判定結果に誤りがでないように徹底されていました。
掲示されたインジケータの合格基準
3-4. 保管・ピッキングエリア
期限切れを防ぐために、全ての包装物において先入れ先出しの原則が徹底されていました。
滅菌ラップの先入れ先出しルール
滅菌バッグの先入れ先出しルール
滅菌コンテナの先入れ先出しルール
器材は全てラックで管理されており、滅菌バッグや滅菌ラップで包装された器材は取り出しやすいように斜めに立てかけられています。
滅菌バッグ用ラック
滅菌ラップ用ラック
ピッキングされた器材はT-Docへ登録されたのち、必要な部署へと払い出されます。
保管エリア内のT-Doc
4.まとめ
いかがでしたでしょうか。
洗浄・消毒→保管ルートと 洗浄→組立→包装→滅菌→保管ルートが明確にゾーニングされていたことや、保管エリアで取り出しルールを定めることで期限切れの製品を少なくする取組などは、日本の病院にも応用できる良い仕組みだと感じました。
今回のレポートが、皆さんの病院で何かのヒントになれば幸いです。