1. アンケート調査の概要
1-1. 調査対象・方法
SALWAYのコンパクトPCDを使用している医療機関に調査用紙を郵送し、使用状況に関する回答を集計。その上で、具体的な導入効果事例が確認された施設に対して、コンパクトPCDの導入効果に関する追加調査を実施しました。
1-2. 使用状況に関する調査の概要
コンパクトPCDの使用状況について、回答が得られた81施設のアンケート結果を集計しました。
【調査期間】
2011年12月~2012年3月
2012年12月~2013年3月
1-3. 導入効果に関する調査の概要
使用状況に関する調査の中で「滅菌器の異常を検知した」と回答した施設に対して、コンパクトPCDの導入効果に関する追加調査を実施。回答が得られた、14施設21事例のアンケート結果を集計しました。
【調査期間】
2012年12月~2013年5月
2. 使用状況に関する調査結果
2-1. 導入の主目的は、内腔器材内部の滅菌確認やリコール予防
導入の目的(複数回答、N=81)
85%の施設が、内腔器材内部の滅菌保証を目的としてコンパクトPCDを導入したと回答しています。コンパクトPCDは、ラパロ鉗子や気腹チューブなどの内腔器材よりも滅菌抵抗性が高いため、コンパクトPCD内のインジケータの結果を確認することで、内腔器材内部の滅菌条件の達成を確認することができます。
また、コンパクトPCDに挿入するインジケータはCI(化学的インジケータ)です。そのため、滅菌終了後にBIのように培養結果を待つことなく、即時に滅菌可否を判定することができます。69%の施設が、リコール予防を目的として導入しているのも納得できます。
病院機能評価受審に向けて、コンパクトPCDを導入した施設も38%ありました。
2-2. 導入検討時には、製品の試用や滅菌器の蒸気浸透性試験を実施
導入検討時の実施事項(複数回答、N=81)
コンパクトPCDの導入検討時、製品の試用(80%が実施)はもちろんですが、41%の施設が滅菌器の蒸気浸透性試験を実施しています。
蒸気浸透性試験は、10本テストと呼ばれる器材を使用して、滅菌器の内腔器材に対する蒸気浸透性能を測る試験です。HPR値*が異なる10本のチューブを滅菌し、どのレベルのチューブまで蒸気を浸透させることができるかを試験します。
製品試用や蒸気浸透性試験の結果を踏まえて、約25%の施設が滅菌器の蒸気浸透性能向上を実施しています。
蒸気浸透性試験(10本テスト)について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
【検証試験】高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)の蒸気浸透性について。内腔器材の内部まで蒸気を浸透させるには?
*HPR値:Hollow-Device-Penetration-Resistance(管腔器材の蒸気浸透抵抗値)の略で、チューブの長さ(m)と内径(mm)を乗じた値(㎜²/1000)のこと
2-3. 導入施設の41%が、コンパクトPCD導入時にリコールマニュアルを改定
導入時の実施事項(複数回答、N=81)
コンパクトPCDの導入により、約35%の施設がその他の滅菌確認方法(CIやBI)を変更しています。それに伴い、リコールマニュアルの改定(41%)や新規作成(14%)を実施していることが読み取れます。
2-4. 導入施設の75%が、コンパクトPCD導入により滅菌保証の質が向上したと回答
導入の効果(複数回答、N=81)
実に75%もの施設が、コンパクトPCD導入により滅菌保証の質が向上したと回答しています。リコールの心配が減る(60%)、職員の意識が向上する(48%)といった効果もみられています。
また36%の施設が、実際に滅菌器の異常を検知しています。これらの施設に対して追加アンケートを実施し、コンパクトPCDの導入効果に関する調査を行いました。
3. 導入効果に関する調査結果
3-1. コンパクトPCD導入により検知した滅菌器の異常の内訳
異常検知の内容(N=21)
真空ポンプ(29%)やドアパッキン(24%)が原因の異常が多いことがわかります。また、配管(14%)や逆止弁(14%)などを原因とする異常を検知した事例もあります。
ここから、それぞれの異常検知の詳細について説明していきます。
3-2. 真空ポンプの故障や性能劣化を検知
真空ポンプを原因とした異常事例
施設 | 解決法 | 詳細 |
A | 滅菌器を修理 | 滅菌器の真空ポンプ性能劣化が確認され、交換により蒸気浸透力を改善 |
B | 滅菌器を修理 | 真空引きの低下が確認され交換 |
C | 滅菌器を修理 | 真空ポンプの故障を発見し交換 |
D | 滅菌器を買い替え | 性能低下が続き、全体的に老朽化したため滅菌器を更新 |
E | 滅菌器を修理 | 真空ポンプ内のパッキン亀裂によるエア漏れを発見、パッキンを交換 |
F | 滅菌器の設定変更 | 真空ポンプ未交換の滅菌器のみで異常を検知。真空パルスを3回から4回に変更し運用 |
コンパクトPCDの不合格をきっかけに、真空ポンプの故障や性能劣化を発見。真空ポンプの交換や修理によって、滅菌器の蒸気浸透力を改善しています。
また、真空パルスを3回から4回に増やすことで、蒸気浸透性を改善している施設もありました。
3-3. ドアパッキンの亀裂や劣化を発見
ドアパッキンを原因とした異常事例
施設 | 解決法 | 詳細 |
B | 滅菌器を修理 | 真空引きの低下が確認され交換 |
E | 滅菌器を修理 | 劣化により破損(亀裂など)、ドアパッキンを交換 |
G | 滅菌器を修理 | 蒸気漏れを発見し部品交換 |
H | 滅菌器を修理 | ドアパッキンの亀裂が見つかり部品交換 |
I | 滅菌器を修理 | 点検によりドアパッキンの劣化が見つかり修理 |
コンパクトPCDが空気リークへ反応し不合格を示したことにより、ドアパッキンの亀裂や劣化を発見しています。ドアパッキンを交換することで対応しています。
3-4. 配管からの蒸気漏れを発見
配管を原因とした異常事例
施設 | 解決法 | 詳細 |
K | 滅菌器を修理 | 点検により小さな蒸気漏れを確認、修理 |
G | 滅菌器を修理 | 蒸気漏れが見つかり修理 |
H | 滅菌器を修理 | 配管からの蒸気漏れが見つかり修理 |
コンパクトPCDの不合格をきっかけに滅菌器の点検を行い、配管からの蒸気漏れを発見し、修理対応を実施しています。
3-5. 逆止弁の故障を発見
逆止弁を原因とした異常事例
施設 | 解決法 | 詳細 |
D | 滅菌器を買い替え | 点検修理するもデータ改善せず、最終的には老朽化のため滅菌器を買い替え |
J | 滅菌器を修理 | 逆止弁が故障していたため修理 |
K | 滅菌器を修理 | 点検により小さな蒸気漏れを確認、交換 |
コンパクトPCDが空気リークへ反応したことにより、逆止弁の故障を発見しています。修理対応をしたものの蒸気浸透性が改善せず、老朽化のため滅菌器を更新した施設もありました。
3-6. 真空パルス回数や暖機運転時間を改善
設定変更の必要性を発見した事例
施設 | 解決法 | 詳細 |
L | 滅菌器の設定変更 | 真空パルス回数の不足がわかり、回数を増加 |
M | 滅菌器の設定変更 | 冬季に1回目滅菌時に不合格の傾向があったため、暖機運転の時間を延長し改善 |
滅菌器の蒸気浸透性を改善するために、真空パルス回数の増加や暖機運転時間を延長し対応している施設がありました。
3-7. マイコンなどの制御機能の不具合を発見
滅菌器の制御機能を原因とした異常事例
施設 | 解決法 | 詳細 |
I | 滅菌器の設定変更 | 稼働が不安定であることがわかり真空工程の設定を変更 |
N | 滅菌器を修理 | マイコン異常で空気除去工程にて部分的リークが発生、滅菌器の使用を中止しメーカー修理を実施 |
マイコン(マイクロコントローラ)の異常により空気除去工程で部分的リークが発生していることを発見し、滅菌器メーカーによる修理を実施した事例がありました。
3-8. その他導入効果に関するコメント
コンパクトPCD導入効果に関するフリーコメント(抜粋)
施設 | コメント |
A | 今まで使用していたインジケータの異常はほとんどなかった。コンパクトPCDのインジケータの色の変化により、更に運転記録などを注意深く見るようになった |
G | コンパクトPCD不合格のため、払い出しを中止し、すぐに再滅菌することができた |
J | コンパクトPCD導入によりスタッフが滅菌器の調子まで気にかけるようになり、他のCIやBIと共になぜ滅菌不具合が起きたのかを検証できるようになった |
N | コンパクトPCD不合格により、払い出しを中止しリコールを防ぐことができた。BIの判定に頼っていたら確実にリコールすることになっていた |
4. まとめ
コンパクトPCDを導入する主な目的は、内腔器材内部までの滅菌やリコール対策でした。導入時には、滅菌物の出荷判定の基準を整理し、リコールマニュアルを改定する施設も。75%の施設が、コンパクトPCD導入により滅菌保証の質が向上したと回答しており、実際に真空ポンプやドアパッキンなど滅菌器の異常を検知した事例もありました。
いかがでしたでしょうか?
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