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コラム

【画像・動画あり】中央材料室とは?その役割や仕事内容、関連する資格などをわかりやすく解説します。

CSSD

病院にある「中央材料室」という部署をご存知ですか?

 

「医療に携わりたい」「病院で働きたい」という方は、求人情報で見かけたことがあるかもしれません。

 

本記事では、中央材料室に初めて携わる方、これから働いてみようと思っている方に向けて、中央材料室の役割や仕事内容、関連する資格などを解説していきます。

 

更新日:2024年8月20日
公開日:2024年7月23日

目次

1. 中央材料室とは

1-1. 手術や診療で使用された医療機器を再生処理(洗浄・滅菌)する部署

外来や手術など診療で使用される医療器材には、再使用するものと使い捨てのものがあります。 再使用する医療器材は、使用後は血液などで汚染されているため、次の患者に使用しても問題のない安全な状態にする必要があります。

この汚染された医療器材を洗浄・滅菌して、安全な状態にするのが中央材料室です。 使用した医療器材を洗浄・滅菌して再使用できるようにする一連のプロセスを「再生処理」と呼びます。

再使用される医療機器

1-2.「中央滅菌室」「滅菌管理室」と呼ばれたり「中材」と略されることもある

中央材料室は、医療機関によって名称が異なる場合もあり「中央滅菌室」「滅菌管理室」「サプライセンター」などと呼ばれることもあります。また、中央材料室を略して「中材(ちゅうざい)」と呼ぶのも一般的です。

なお、中央材料室はすべての医療機関に必ずある部署ではありません。中央材料室があるかは、再生処理が必要な器材をどれだけ多く使うかによります。例えば、精神科病院には中央材料室がない場合もあります。また、クリニックや小規模な医療機関では、中央材料室という名前の部署はありませんが、別の部署が中央材料室の役割を担っていることがあります。

1-3. 英語ではCSSD(Central Sterile Supply Department)と呼ぶ

中央材料室は、英語で”Central Sterile Supply Department”といい、”CSSD”と略されます。日本でも、中央材料室のことをCSSD(シーエスエスディー)と呼ぶこともあります。

1-4. 中央材料室の仕事は、医療機関に不可欠な重要な仕事

日々行われる外来診療や手術には、安全な医療器材が不可欠です。適切な滅菌業務を行わずに汚染された医療器材を使いまわせば、その器材に付着した細菌やウイルスによって患者さんが別の病気になってしまう恐れがあります。

中央材料室では患者さんと直接対面することはありません。しかし、その業務は患者さんに直接触れたり、体内で使用する医療器材の安全性に関わっています。洗浄から滅菌まで、ひとつひとつの工程すべてが患者さんの命につながっている、極めて重要な仕事です。

中央材料室向け製品を扱う「SALWAY」のブランドムービー。中央材料室で真摯に働く人々を描き出している。

 

2. 中央材料室の業務

2-1. 中央材料室の役割は安全な器材を提供すること

中央材料室の役割は、使用して汚染された医療器材を洗浄・滅菌して、次の患者さんに使える安全な状態にすることです。では、「安全な状態」とはどのような状態でしょうか?

使用した医療器材には、目に見える汚れと目に見えない汚れが付着しています。安全な状態にするには、血液などの目に見える汚れはもちろん、目に見えない汚れ、つまり細菌やウィルスといった微生物まで殺滅しなければなりません。

現在の医療では、微生物が存在している確率が100万分の1以下である状態を、安全な状態とみなしています。この状態を、医療機関に求められる「無菌性保証水準(SAL)」が達成された状態、と言います。

「無菌性保証水準(SAL)」について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

(記事)無菌性保証水準(SAL)とは?その意味や覚えておきたい関連用語について解説します。

2-2. 中央材料室のレイアウトは、洗浄エリア・組立エリア・既滅菌エリアで構成される

中央材料室では使用後の汚染された器材を扱うため、汚染(ダーティーエリア)から清潔(クリーンエリア)に向けて、器材が一方通行に運ばれていくレイアウトになっています。一度クリーンエリアに運ばれた器材は、ダーティーエリアに戻らない動線です。

中央材料室は、使用された器材を洗浄する「洗浄エリア」、洗浄した器材を点検・包装する「組立エリア」、滅菌した器材を保管する「既滅菌エリア」で構成されています。このうち、洗浄エリアはダーティーエリア、組立エリアと既滅菌エリアはクリーンエリアです。

中央材料室のレイアウトは、洗浄エリア、組立エリア、既滅菌エリアの3ゾーンを物理的に分離するのが理想と言われ、比較的新しい病院でよく採用されています。ただ、元々2ゾーン(組立エリアと既滅菌エリアが一緒)が一般的であったこと、施設面積などの事情で3ゾーンにできない場合など、2ゾーンの施設も多くあります。

ゾーン分け

 

 

次項から、各エリア毎に実施される業務の概要を紹介していきます。

中央材料室 仕事の流れ

2-3. 洗浄エリア

 

 2-3-1. 搬送:診療や手術で使用された器材を中央材料室へ運ぶ

搬送

手術室や外来で使用され汚染された器材は、再生処理するために中央材料室へ搬送されます。使用済み器材の搬送には、専用のコンテナ等が使用されます。汚染された器材は速やかに処理する必要があるため、中央材料室は手術室に隣接、または直通のエレベーター等で繋がっている場合が多いです。

 2-3-2. 洗浄/消毒:目に見える汚れを除去する

洗浄エリア

中央材料室に搬送された器材は、まずは洗浄/消毒されます。洗浄とは、目に見える汚れをすべて除去することです。具体的には、洗浄器に入れる「機械洗浄」、洗剤に漬け置きする「浸漬洗浄」、ブラシで擦る「用手洗浄」などがあります。機械洗浄では、大型の洗浄器であるウォッシャーディスインフェクター(WD)や、超音波洗浄装置などを使用します。

洗浄ウォッシャーディスインフェクター

 

2-4. 組立エリア

 

 2-4-1. 検査・トレイ組み:器材が適切に機能するかを検査してセットにする

組立エリア

洗浄/消毒された器材に汚れが残っていないか、器材に亀裂が入っていないか、切れ味は落ちていないか等を検査します。洗い残した汚れがあると、この後の滅菌の工程で不具合が起こる可能性があるため、拡大鏡やライトを用いて十分に確認します。

検査が終わったら、トレイ組み(組み立て)を行います。手術や処置の種類別にあらかじめ必要な器材が決められており、その内容に合わせて器材をセットします。手術中に「器材が見当たらない」「必要な器材がない」などが起こると、大きな問題につながります。必要な器材が全て揃っており、かつ使いやすいようにトレイ組みしていきます。

 2-4-2. 包装:器材を滅菌バッグや滅菌コンテナに入れて密封する

包装

組み立てられた器材は、「滅菌バッグ(パック)」と呼ばれる袋に入れたり、「ラップ材」と呼ばれるシートでくるみます。「滅菌コンテナ」と呼ばれるフタ付きの頑丈な容器に入れる場合もあります。この工程を「包装」と呼びます。

滅菌バッグなどの包装材は、滅菌に必要な蒸気やガスは通しますが、微生物は通さない特殊な構造になっています。滅菌前に包装することで、滅菌後~使用直前までの保管中、器材を汚染から守り、無菌状態を維持できるようにします。

 2-4-3. 滅菌:目に見えない微生物を殺滅する

既滅菌エリア

包装した器材を滅菌器に入れて滅菌します。洗浄後の器材は一見清潔に見えますが、まだ目に見えない汚れ(細菌やウィルスなどの微生物)が付着しているため、安全な状態とは言えません。滅菌によって、目に見えない微生物まで殺滅します。

滅菌方法には、蒸気を使用する「高圧蒸気滅菌」や、ガスを使用して滅菌するガス滅菌があります。ガス滅菌は、「過酸化水素ガス滅菌」「EOG滅菌」「ホルムアルデヒド滅菌」の3種類があります。滅菌する器材に合わせて、4種類の滅菌方法を使い分けます。このうち「高圧蒸気滅菌」が、滅菌できる素材の種類が多く、コストパフォーマンスにも優れているため、最も多く使用されています。

2-5. 既滅菌エリア

 

 2-5-1. 保管:滅菌した器材を再汚染されないように保管する

保管

滅菌されたことが確認された器材は、専用の棚などで保管中に器材が再汚染されないよう、一定の条件下で保管されます。

 2-5-2. 搬送:医療現場に器材を供給する

搬送・使用

保管された医療器材は、必要な時に保管場所から取り出され、外来や手術室などへ運ばれます。中央材料室での滅菌された器材は、次の患者さんの命を救うために旅立って行きます。

 

3. 中央材料室の様子がわかる動画

本章では、中央材料室の様子を紹介している動画をいくつかご紹介します。

3-1. 筑波メディカルセンター病院(4分55秒)

茨城県つくば市にある筑波メディカルセンター病院の中央材料室の紹介動画です。回収から洗浄、滅菌、供給までの再生処理プロセスをわかりやすく紹介されています。

 

3-2. 愛知県医療療育総合センター中央病院(3分55秒)

愛知県春日井市にある愛知県医療療育総合センター中央病院の中央材料部の紹介動画です。中材で使用している洗浄器や滅菌器、行われている作業を紹介されています。

3-3. 倉敷中央病院(7分46秒)

岡山県倉敷市にある倉敷中央病院の中央滅菌センターの紹介動画です。再生処理の各工程をふりがなのある字幕付きで丁寧に紹介されています。

 

4. 中央材料室に関連する資格

本章では、中央材料室で生かせる資格を紹介します。中央材料室で働くには、医師や看護師のような免許制度はありませんが、専門性の高い分野であるため、資格を取得しているとより活躍することができます。

4-1. 滅菌技師(滅菌技士)

 

 4-1-1. 日本医療機器学会が認定している資格

滅菌業務に関連する資格の1つに、「滅菌技士(滅菌技師)」があります。日本医療機器学会が認定している資格で、「医療施設に関連した滅菌供給の知識と実践に優れた技士を養成すること」を目的に、2000年に発足しました。

 4-1-2. 第1種滅菌技師、第2種滅菌技士の2種類がある

滅菌技師(士)には、「第1種滅菌技師」と「第2種滅菌技士」の2種類があります。第1種の方が上位資格であり、より難しい試験になっています。

第1種滅菌技師の試験は、第2種滅菌技士であることが条件になっているため、全く資格の無い状態から第1種滅菌技師になることはできません。第2種滅菌技士として認定されるには、試験に合格することの他に、以下の要件が必要となります。

・日本医療機器学会の会員であること(合格後に入会可能)
・滅菌供給業務の実践に3年以上携わっていること
・日本医療機器学会が作成した「医療現場における滅菌保証のガイドライン」の内容が理解実行できること

第1種滅菌技師の合格には、2日間の講習の受講、筆記試験、実技試験をクリアする必要があり、より高度な専門性が求められます。

滅菌技士(滅菌技師)について詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。

(記事)滅菌技士(滅菌技師)とは?取得方法や合格率など、実際の滅菌技師がわかりやすく解説します。

 

4-2. 滅菌管理士・滅菌消毒業務受託責任者

 

 4-2-1. 日本滅菌業協会が認定している資格

医療機関の中央材料室の業務を代行する「滅菌受託業者」向けの資格として、「滅菌管理士」や「滅菌消毒業務受託責任者」があります。医療法及び関連法令によって、滅菌受託業者は「滅菌消毒業務受託責任者」の資格取得者を配置することが求められます。

 4-2-2. 滅菌消毒業務受託責任者は滅菌管理士の上位資格

「滅菌消毒業務受託責任者」は「滅菌管理士」よりも取得が難しい上位の資格です。

「滅菌管理士」の資格を取得後、業界経験3年以上の方であれば「滅菌消毒業務受託責任者」もしくは「院内滅菌消毒業務受託責任者」の資格取得のチャンスを得ることができます。

詳細は、日本滅菌業協会のHPをご覧ください。

4-3. 未経験で入職(入社)し、働きながら資格取得する人が多い

中央材料室で働く人は、業界未経験で働き始める人が多いようです。働くのに資格は必須ではありませんが、働き始めると理解を深めたくなり、働きながら勉強して資格取得する人が多くいらっしゃいます。医療機関や会社によっては、資格手当が出る場合もあります。

 

5. 中央材料室で働く方法

中央材料室で働く方法としては、大きく2つの方法があります。

5-1. 病院職員として働く

医療機関の中には、自院のHPなどで中央材料室の求人を出していることがあります。この場合は病院の職員として働くことができます。

また、派遣会社が派遣先として中央材料室を紹介することもあります。

5-2. 滅菌受託業者の社員として働く

看護師などの医療スタッフの負担軽減や採用難を背景として、再生処理業務を外部委託する医療機関が増えてきています。再生処理業務を代行する滅菌受託業者に入社し、配属先の医療機関の中央材料室で働くこともできます。

ここでは、主要な滅菌受託業者をいくつか紹介します(五十音順)。

エア・ウォーター
鴻池メディカル
ダスキンヘルスケア
日本ステリ
リジョイスカンパニー
ワタキューセイモア

 

6. 中央材料室関連の求人

本章では、中材の求人が掲載されている求人サイトをいくつか紹介します。

6-1. Indeed(インディード)

「仕事探しはIndeed(インディード)」でおなじみの求人検索エンジンです。検索キーワード「中央材料室」で検索すると、たくさんの求人が出てきます。
Indeed(インディード)

6-2. 求人ボックス

Indeedと同じ、求人検索エンジンの大手です。
求人ボックス

6-3. ジョブメドレー

ジョブメドレーは、医療介護業界で働きたい人のための求人情報サイトです。中央材料室の求人も掲載されています。
ジョブメドレー

 

7. 中央材料室で活躍する人のインタビュー記事

再生処理の現場

SALWAYでは、中央材料室で活躍されている方々へのインタビュー記事「再生処理の現場」を発信しています。

中央材料室に携わるようになったきっかけから、取り組みや仕事への思い、今後の展望など様々なことをお話いただいています。ぜひご覧ください。

SALWAY「再生処理の現場」

 

 

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